本研究の目的は、うつ病および不安症の発症・維持に関与する神経基盤を感情調整不全という観点から明らかにすることであった。具体的には、(1)感情調整不全に焦点づけられた認知行動療法(統一プロトコル)の介入前後に生じる脳の構造的および機能的変容の検討、(2)介入前の脳画像データを用いた、統一プロトコルに対する治療反応性の予測モデルの構築および検証を目的とした。 本研究は、統一プロトコルの有効性を検証するランダム化比較試験の附属研究として実施しており、その主たる臨床試験のキーオープン(割付表の公表)が完了していないため、実質的な解析はまだ行なっていないが、解析計画を立案した上で、以下のように取り組んだ;新規で14名の健常者に対して脳画像データの取得を行なった。加えて、既存の他研究で取得済みの健常者の脳画像データを使用するための手はずを整え、解析時に使用可能な状況を整えた(健常群の脳画像データ50名分の確保完了)。前出の統一プロトコルのランダム化比較試験に参加した患者群の脳画像データの前処理を継続して行なった。予測モデル検証用の患者の脳画像データの撮像を8例分実施し、取得した脳画像データの前処理を行い、予測モデルを構築でき次第、解析に可及的速やかに移行できるよう準備を整えた。 今後は、前出のランダム化比較試験のキーオープンが完了し次第、(1)健常群および患者群の脳画像データを用いて、介入前後に生じる脳の構造的・機能的変容を検討し、(2)患者群の介入前の脳画像データを用いた治療反応性の予測モデルを構築し、(3)新たに取得した患者の脳画像データを用いて検証を行う予定である。そして、検討した結果については、国際学術雑誌に投稿し、公表する。
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