研究課題/領域番号 |
16K17356
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
中里 和弘 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (90644568)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 死別 / 遺族 / 在宅 / グリーフケア / 終末期ケア / 家族の適応 |
研究実績の概要 |
今後、多死社会では在宅で患者を看取る家族の増加が予想される。そのため在宅医療に携わる医療者には、看取り後の遺族への支援(グリーフケア)を提供するだけでなく、看取り前の終末期ケアにおいて、死別後の遺族に悲嘆の軽減に繋がる本人と家族へのケアの質を高める両者の視点が求められる。しかしながら、在宅における終末期ケアが死別後の遺族の適応に及ぼす影響を検証した研究は極めて少ない現状にある。 そこで本研究課題は、在宅における終末期ケアとグリーフケアを独立するものではなく、相互に関連し合う連続性をもったケアと捉える。これまで本研究者らはケア提供者側の視点から、死別後のグリーフケアを検討すると共に、遺族の適応に関連する終末期の要因を整理した。 本年度は、これまでの研究知見をもとに、医療者からケアを受けた当事者である遺族の視点から、提供された在宅における終末期ケアと遺族の適応及びグリーフケアの授受との関連を検討することを目的に調査研究を実施した。関東1都6県の在宅看取りに対応している51か所の訪問看護事業所の協力を得た。平成27年4月~平成28年3月の間に調査協力機関から在宅での訪問看護サービスを受けて自宅または病院で死亡した利用者の遺族753名(死別から半年~1年半)を調査対象とした。訪問看護事業所を通じて自記式の質問紙調査を配布し、349名から(46.3%)回収した。そのうち死亡場所の回答に対して自宅または病院と明記された329名(自宅で死亡―246名;病院で死亡83名)の回答を分析対象とした。故人の続柄は、配偶者46.3%、親41.2%、義親8.1%、その他1.8%だった。死別からの経過時間は平均11.6±3.8か月であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた進行に沿って、遺族調査をスムーズに進行・実施することができた。調査協力機関は51か所、遺族の質問紙の返信数は349名であった。これらの調査人数は、在在宅療養患者の遺族を対象にこれまで実施されてきた量的研究の中でも比較的多く、統計解析が可能な人数を確保することができた。また調査協力機関の負担を最小限にとどめ、遺族への倫理的配慮を講じる丁寧かつ簡潔な手続きを行うことにより、調査実施に伴うトラブルは一切生じなかった。
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今後の研究の推進方策 |
得られたデータ解析を進め、学会発表・論文投稿の準備を進める。分析に関しては、終末期ケアの評価、グリーフケアの享受を独立変数、遺族の適応を従属変数、それ以外の関連要因を調整変数に多変量解析を行うことで、終末期ケアとグリーフケアの享受が遺族の適応に及ぶす仮説モデルの構築を行う。今後は、本調査から得られた仮説モデルを検証する調査の実施に向けた準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査実施するにあたり、調査協力機関のリクルートや対象者への配布等に関して、遺族への倫理的配慮を確保するとだけでなく、手続きを丁寧かつ簡便にすることで、調査費用(調査協力機関、遺族への発送費や印刷費等)を当初の予定額よりも節約することができた。節約できた費用を活用し、分析結果を幅広く学会発表・論文投稿することで学術的貢献を図る。また分析結果を報告書にまとめ、協力機関に送付することで臨床的還元を図りたい。
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次年度使用額の使用計画 |
調査結果の学会発表・論文投稿に関わる費用(旅費・校正費等)、報告書の作成及び送付費用(報告書作成費・印刷費用・発送作業費等)で使用する。
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