研究課題/領域番号 |
16K17356
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研究機関 | 尚絅大学短期大学部 |
研究代表者 |
中里 和弘 尚絅大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (90644568)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 死別 / 遺族 / 在宅 / グリーフケア / 終末期ケア / 家族ケア / 看取りの満足度 / 適応 |
研究実績の概要 |
これまでに実施した遺族調査からは、終末期の意思決定に関わる家族に対して患者本人の意向を軸に働きかける意思決定支援が本人の希望に沿った生活の実現を介して、遺族の看取りの満足度に繋がることが確認された。これにより遺族の満足度をアウトカムとした場合、終末期の意思決定に関わる家族への対応として本人の意向を軸とした支援が重要性といえる。そして遺族の看取りの満足度は終末期の質を評価する指標と捉えるだけでなく、遺族の心理的適応との関連から検討することがグリーフケアを必要とする遺族の把握に繋がる可能性がある。 そこで本年度は、昨年度に実施した門徒遺族の質問紙調査のデータについて、看取りの満足度に焦点を当て分析を進めた。主な分析内容は、故人の属性、遺族の属性、死亡場所、死別からの経過時間、看取りの満足度、死別からの立ち直りの程度、故人の死に対する肯定、精神的健康度、身体的健康度であった。多変量解析の結果、看取りの満足度が高いほど、死別から立ち直っており、故人の死を肯定していることが示唆された。一方で精神的健康度では、身体的健康度が低いほど精神的健康度が低かったが、看取りの満足度との関連は見られなかった。よって死別からの立ち直りの程度を遺族の心理的な回復を評価する1つの指標と捉えた場合、看取りの満足度は遺族の心理的な回復を予測する変数となり得るといえる。先行して行った遺族調査結果と合わせて考えると、遺族の看取りの満足度に繋がる終末期の家族ケアが死別後の心理的な回復に繋がる可能性が考えられる。 なお在宅医療におけるグリーフケアとしては、死別前のケア(終末期の家族ケア)と死別後のケア(遺族ケア)の両方の視点から支援の在り方を検討することが重要といえる。そこで本年度は、遺族を対象に死別の前後で提供されたケアが現在の心理的適応に及ぼす影響を検討することを目的としたインターネット調査の準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
訪問看護サービス利用者の遺族を対象に実施した終末期の意思決定に関わる家族への支援と遺族の看取りの満足度との関連を検討した論文が掲載された。昨年度に行った門徒遺族の調査データに関して遺族の看取りの満足度と心理的適応の関連性の分析を行い、研究成果の発表に向けた作業を進めた。 またこれまでの調査結果から、遺族の心理的適応に繋がると考えられる死別前のケア(終末期の家族ケア)と死別後のケア(遺族ケア)を整理し、在宅で患者を看取った遺族への調査デザインを検討した。そして多変量解析を用いて終末期の家族ケア・遺族ケアが遺族の適応に及ぼす影響を分析するためには必要なサンプル数を確保する必要があり、その手段としてインターネット調査が有効と考える。当初は、在宅で患者を看取った遺族を対象にインターネット調査を1回実施する予定であったが、遺族ケアを終末期の家族ケアとの連続性から捉えて支援意義を検討する上では、遺族を対象とした縦断調査から研究知見を得ることが有益であると言える。本年度は、在宅で患者を看取った遺族を対象に2回のインターネット調査を実施するための準備として調査会社との調整、調査内容の選定等の作業を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度にはインターネット調査を実施して、在宅で患者を看取ってから半年から2年以内にある遺族から2時点(1回目の調査から半年後に2回目調査を行う)での回答を得る。そして終末期の家族ケア・遺族ケアが遺族の適応に及ぼす影響について分析を行うことで、在宅におけるグリーフケアの在り方を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
終末期の家族ケア・遺族ケアと遺族の適応との関連について因果関係を含めて検討を行うためには、解析可能な一定数のサンプル数の確保に加えて、縦断データを得る必要がある。そこで本年度は、次年度に実施するインターネット調査に掛かる費用を確保した。 インターネット調査では、在宅で患者を看取った遺族を対象に、1回目調査の回収サンプル数を約800~1000人程度、1回目の調査の回答者のうち2回目の調査に回答する人の回収サンプル数を400~500人程度と想定している。調査の実施にあたっては、調査会社を通じてWEB調査項目の作成、サンプリング、モニターへの調査依頼、WEBにおける回答の回収とデータの集約などの手続きが必要となり、それらの費用に研究費を使用する。
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