研究課題/領域番号 |
16K17360
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
魚野 翔太 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (10766398)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 統合失調型パーソナリティ / 表情 / 視線 / 自閉スペクトラム症 |
研究実績の概要 |
本研究では、統合失調型パーソナリティの傾向が高い人において、ASDとは逆に自動的な共同注意や表情処理が促進されおり、その程度が高いほど解釈を必要とするレベルの社会認知課題での問題が生じるという仮説について検討した。視線と表情の自動的なレベルでの処理を評価するために視線手掛かり課題と表情の視覚探索課題を、解釈を必要とするレベルの社会認知機能を評価するために目からのこころの読み取り課題と表情認識課題を用いた。年齢、性別、IQの影響を統制し、課題成績と質問紙で評価された統合失調型パーソナリティの傾向との関係について調べたところ、統合失調型パーソナリティの傾向が高い人では表情認識成績と感情表情の検出効率がともに低下していることが示された。一方で、視線処理との関連性はみられなかった。この結果から、統合失調型パーソナリティの傾向が高い人では解釈を必要とするレベルだけでなく表情の自動的な処理についても問題があると考えられ、自動的な処理の促進が解釈を必要とするレベルでの障害をもたらすという仮説とは一致しない結果であった。同様の知見が臨床群にもあてはまるか検討するために、上記の課題に加えて自動的なレベルでの処理を評価できる表情模倣課題を臨床群で実施する準備を整えた。 また、社会認知機能の個人差について検討するため、視線方向知覚の個人差や表情認識能力の神経基盤について検討し、統合失調症スペクトラムへの応用を検討した。社会認知機能の個人差を説明する基礎的な機能について調べるために、時間順序判断の精度や音によるフラッシュ錯視の見えやすさが一般群における社会的スキルやコミュニケーションの個人差と関連することを示し、臨床群に応用する準備を行った。 本年度得られた成果については学会発表を行い、論文を執筆・投稿中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一般群で得られた結果が当初想定していたものとは違ったため、実験課題の選定や実験設備の構築に時間を要し、統合失調症臨床群での実験を終えることができなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
複数の精神科医師と連携して統合失調症臨床群での実験を進める。また、特に統制群のデータを効率的に取得するため、実験アシスタントを雇用する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究成果の確定が遅れ、国際学会への参加を見送ったために余剰が生じた。次年度の国際学会での発表のための旅費として使用する。
|