研究課題
統合失調型パーソナリティ傾向の高い人において、ASDとは逆に自動的な共同注意や表情処理が促進されおり、その程度が高いほど解釈を必要とするレベルの社会認知課題での問題が生じるという仮説を検討した。視線と表情の自動的なレベルでの処理を評価するために視線手掛かり課題と表情視覚探索課題を、解釈を必要とするレベルの処理を評価するために目からのこころの読み取り課題と表情認識課題を用いた。これらの4つの行動課題と知能検査を行い、課題成績と質問紙で評価された統合失調型パーソナリティ傾向との関連性を評価した。年齢、性別、IQの影響を統制したところ、統合失調型パーソナリティの傾向が高い人では表情認識成績が低く、視覚探索課題の感情表情と中性表情の検出効率の差がみられにくかった。一方で、視線処理との関連性はみられなかった。この結果から、統合失調型パーソナリティの傾向が高い人では解釈を必要とするレベルだけでなく表情の自動的な処理についても問題があると考えられる。しかし、感情表情の検出が低下しているのか、中性表情の検出が亢進するのかが明確ではないため、今後の検討を必要とする。統合失調症患者での実験を検討したが、実験参加を依頼できる人の多くが高齢の慢性期の患者であり、実験課題遂行自体に困難な部分があることがわかった。そのため、今後、参加者のリクルートとデータ取得方法を再検討して実験を行う必要がある。発展として、統合失調症や自閉スペクトラム症で顕著に表れる社会認知機能の個人差を説明する基礎的な機能について調べ、時間順序判断の精度や音によるフラッシュ錯視の見えやすさが一般群における社会的スキルやコミュニケーションの個人差と関連することを示した。この結果から、対人相互作用障害の至近的な要因に加え、基礎的な心的機能に介入することでより大きな社会適応の改善が生じる可能性が考えられる。
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