現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は小学生を対象とした縦断的実験を開始する予定であったが、小学生からデータを得るという実験環境(研究協力機関)を探す過程が難航し、実験開始に至らなかった。その間、成人を対象とした質問紙調査の結果の分析を進め、成人期、およびその成人の記憶中の幼少期の色字共感覚保有率等についての考察を深めることに注力した。さらに、関連する研究として、文字に性別や性格などパーソナリティを感じるタイプの共感覚の発達的変化についての研究にも従事しているが、その成果が国際論文誌に掲載された(Matsuda, Okazaki, Asano, & Yokosawa, 2018)。この研究をまとめる過程で、本研究課題である色字共感覚の発達的変化についても理論的構築を進めることができた。 また、イギリスの王立協会(The Royal Society)で開催された共感覚についての研究会(Discussion Meeting)"Bridging senses: new developments in synaesthesia"で、色字共感覚と言語発達の関係についての招待講演をした。この研究会には、現在の共感覚研究の基盤を築き上げ、今もなおこの研究分野を牽引する世界的な研究者たちや、この分野の気鋭の若手の研究者たちのほとんどが参加しており、そこで講演をし、最新の情報を収集し、濃密な意見交換を行ったことは、本研究課題を推進する上での非常に大きな収穫となった。 以上をまとめると、当初の研究計画の柱である小学生を対象とした実験の開始が遅れている点は大きな問題である。しかしその一方で、成人を対象とした調査の結果の分析が進んだ。また、関連研究の遂行や国際的な研究交流により、本研究課題の理論的考察は大いに深まった。そこで、総合的には、本研究課題は現在のところおおむね順調に進展していると判断した。
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