最終年度に実施した研究の成果は以下の通りである。 授業記録を活用した授業後協議会の記録を用いた協議会記録の分析会の発言内容により、理論的かつ実践的な知見を得る手法について整理し、速記録とビデオ録画との比較に基づく論点の抽出について、国際学会で発表した。その結果、授業研究の目的に関する国際的な相違が明らかになった一方、日本における速記録の活用に、日本の教師文化が表出していることが示された。授業記録と授業後協議会の在り方について文化的な視点での検討が必要という示唆が得られた。 上記の研究により、授業後協議会における、時間のコントロール、身体情報という点から、写真の活用とその意義が考えられ、公立中学校の協力を経て、授業研究会のデザインに実装された。事後協議会記録と質問紙結果を量的かつ質的に分析した結果、次の5点が示された。第1に、事実の共有と焦点化が可能となり、焦点化した協議による問題化や子どものつまずきの表象が見られた。第2に、文字記録に比べて身体的な情報をもとに協議でき、子どもの名前を確認しつつ、子ども同士のコミュニケーションの事実表象が引き出された。第3に、複数の写真をつなげることで、時間的距離の遠い事実同士をつなげることが可能という点については、撮影した写真を複数連続して提示し語ることで、比較や共通性に関する語りが引き出された。第4に、写真を撮る対象を限定することで、教師の授業をみる視点に影響を与える可能性が考えられ、子どもの表情や特定の子どもに注意を向ける傾向を生み出した。第5に、特定場面を出すときの操作は短時間であるという写真の利点については、撮影者による語りが中心であったため、本事例では特定場面を抽出して参照する場面は見られなかった。 今後は、授業後協議会の談話分析をさらに進めると共に、写真活用に関する課題克服のための授業研究会のデザインに関する研究をさらに進める。
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