最終年度は、学校外教育、とりわけ夜間中学を対象に、公費がどのような政策において配分されるようになったかを明らかにする研究を行ってきた。そこでは、政治主導によって夜間中学への公費配分が行われるようになったこと、しかしながらその政治主導は表層的なものであり、深層では現場教師というアクターによって主導されていたことが明らかになった。こうした研究成果は、教育における政治主導は望ましくないというこれまでの通説的な理解を覆すものである。当該政策が望ましいか否かは、表層で主導しているアクターだけで判断するのではなく、深層にいるアクターまでも射程に入れて診断することが必要であることを示唆するものであった。以上の研究成果は、新自由主義に基づく資源配分が、経済的効率性や経済的有用性というものだけに支配されるものではなく、本来配分されるべき対象に資源を配分するための配分方法の組み換えを行う契機になっているともいえることを端緒的ではあるが明らかにしている。
この点は2017年から本研究において取り組んできたNPO団体等による学習支援教室の活動調査における資源配分の方法においても同様のことがいえた。すなわち新自由主義的な社会構造改革の被害者でもある経済的困窮家庭の子ども・若者へ焦点化した配分方法として生活困窮者自立支援法が確立し、この法における理念を実現するものとして学習支援教室への配分が行われてきたが、こうした配分そのものが新自由主義によって生成されているということである。つまりここでもこれまで対象とされてこなかった人々を対象とする配分方法の組み換えが新自由主義政策によって行われており、結果として本来配分されるべき対象に資源を配分できるようになったともいえるのである。
こうした視点は研究計画当初の仮説を覆すものとなった。仮設は調査を通じた「事実」の構成によって編みなおされることを痛感した研究となった。
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