本研究は、①教員養成に携わる大学教員が「教師教育者(teacher educator)」として抱いている「教師教育者」観について調査を実施し、とりわけ「教育の倫理」に関する自らの役割についてどのように捉えているのかを分析・整理すること、および②国内の「教師教育者」の役割観と海外のそれとの相違を分析し、とりわけ「教育の倫理」に焦点を当てながら、日本における教師教育者観の特徴や課題を整理すること、を目的とした。 この研究の総括として、本年度は日本の教員養成において見過ごされがちな2つの倫理的な問題に注目して研究を進めた。一つは、途上国における教育開発を行う際に直面する教育及び教員養成における啓蒙的側面について。二つ目は、特定の相手に対して差別意識やヘイトの感情を抱く人間に対する倫理的な介入のあり方について。一つ目の問題については、世界銀行において途上国の教育開発に携わる専門家を大学に招き、教師を目指す学生らが考察すべき教育開発のジレンマに関するヒアリング調査を行い、教材開発のサポートをいただいた。二つ目の問題については、修復的正義の理論的分析を進め、WERA(世界教育学会; World Educational Research Association)の年次大会にて発表を行った。 また、これらの研究成果をもとに、教育に関するリフレクションを促す授業の教材開発を行うとともに、学生や地域の教員を対象とした哲学対話のワークショップ開発を行った。
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