研究課題/領域番号 |
16K17388
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
葛西 耕介 愛知県立大学, 教育福祉学部, 講師 (00769010)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 学校への父母参加の学説史 / アカデミー政策 / 親の教育権 / 学校運営協議会 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本の学校運営協議会のモデルであるイギリスの学校理事会と、それらとは対照的な原理に立つ父母参加の“先進国”ドイツの学校会議を対象にして、文献調査および実証調査を行い、各制度における父母・教師・行政機関の固有の役割と位置づけを解明することによって各制度を支える原理と思想を理論的・実証的に明らかにし、もってわが国の学校運営協議会制度を国際水準に沿った制度ないし運用に高めることを目的としている。本年度は、文献調査が中心となった。 この点、イギリスでは、2010年の保守党政権成立以降アカデミー化が進められ、特に近年、全ての公立初等中等学校をアカデミー化するという大胆な政策のもと、学校理事会における親理事の位置づけ方に大きな変化がみられる。こうした変化を、近年に発行・出版された政策文書、学術図書・研究論文を用いた研究を通じて、一方では学校理事会の歴史全体の中に、他方では教員政策も含めた現在の教育政策全体像の中に位置付け、分析した。 日本については戦後を3つの時期に区分し、教育行政学、教育法学、憲法学等にわたる父母参加学説について網羅的に文献研究を進めた。そこでは、その背後にある教育・政治思想との関係も含め、多くはない父母参加学説の展開を跡付け、主だった学説の類型化と意味づけを行った。そして、イギリスやドイツと比べた場合の日本の父母参加学説の全体的な傾向として、私事性・親の教育権による公教育の基礎づけが弱い点、教育の自由について教師に多くを依存している点、行政の作為よりも不作為を求める理解が学説の多数を占める点を明らかにし、こうした理由から、日本では父母参加が思想的・制度的に弱い点を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
所属大学が変わり勤務環境の変更という事情があったこともあり、当初計画していたような海外への訪問調査・インタビュー調査を本年度は実施できなかった。そのため、こうした調査は翌年度に集中的に行うこととし、本年度は文献調査を当初の計画以上に進めることにシフトした。こうしたことから、実地調査の点では遅れることになったが、文献調査の点では当初の計画以上の進展があった。全体としては、おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画とは異なり、文献調査を先行させ、訪問調査・インタビュー調査を後回しにしたため、今後は、訪問調査・インタビュー調査を集中的に行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外調査を予定していたが、実施しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度実施しなかった海外調査については、次年度に行う予定である。
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