本研究は、日本の学校運営協議会のモデルであるイギリスの学校理事会と、それらとは対照的な原理に立つ父母参加の“先進国”ドイツの学校会議を対象にして、文献調査および実証調査を行い、各制度における父母・教師・行政機関の固有の役割と位置づけを解明することによって各制度を支える原理と思想を理論的・実証的に明らかにし、もってわが国の学校運営協議会制度を国際水準に沿った制度ないし運用に高めることを目的としている。最終年度である本年度は、日本の学校運営協議会の訪問調査を行うとともに、昨年度までに知見を得たイギリスやドイツの制度原理の基礎にある思想と対照しつつ、戦後の日本の父母参加学説の展開をトータルに把握・分析し、論文化することを主題とした。 具体的には、第1に、都市部の小中学校の学校運営協議会に焦点を当ててその傍聴による調査を行い、多様性と共通性の分析を進めた。その結果、参加者の属性(在学生の保護者か地域住民か)によって議論の対象・視角が異なるという明らかな特徴が見とれた。ただし、調査として量的・地域的になおも限定的で端緒的であるため、継続していく予定である。 第2に、戦後日本の父母参加学説の展開をトータルに明らかにする論文の執筆を行った。前年度までに引き続き、教育行政学、教育法学、憲法学等にわたる父母参加学説について網羅的に文献研究を進め、父母参加学説についてその背後にある教育・政治思想との関係を意識して主だった学説の類型化と意味づけを行った。こうした数年にわたる研究を総括し、イギリスやドイツと比較した場合の「親の教育権」思想の不在という日本の独特さに着目した論文を執筆した。 戦後日本の父母参加学説史を描くという相当の分量を伴う研究論文の執筆に集中したため、2018年度中の学会誌などでの研究成果の公表はできていないが、研究成果の公表は近日行う予定である。
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