研究課題/領域番号 |
16K17391
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
藤井 佑介 長崎大学, 教育学部, 准教授 (20710833)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 省察 / 対話的自己 / アーカイブシステム / 全天球カメラ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は協同学習を行った教師の省察を支援するツールの開発と実証である。そのために以下の2点に関して研究を行った。 まず、これまでの研究ではICレコーダーやビデオカメラを用いて、協同学習場面を記録し、逐語記録やそれを支援するGD(group discussion)表の作成を行ってきた。逐語記録やGD表が協同学習における子どもや教師の様子を把握するための有効な資料となることは明らかとなっている一方で、作成に対する手間がかかり、学校現場において教師が活用することは困難であるという課題も残されている。そこで、本研究では近年、安価に入手可能となった全天球カメラとそのデータを管理する授業アーカイブシステムに着目した。全天球カメラをグループ学習の中心に置くことで、360度の映像を記録することができる。音声のみではなく、子どもの表情や仕草も捉えることができ、協同学習場面における子どもの学習場面を把握するには有効なツールの一つであると言える。教師が協同学習に関する授業の省察を行うためには、複数のグループを同一画面で見れるようなシステムが必要であり、アーカイブとしてシステム開発を行った。複数のグループの様子を同時に閲覧することは可能となったが、情報量が多すぎて視点を絞ることが難しいといったことや操作において課題が残された。 次に、省察に関する研究を進めていく上で、授業省察に関わる理論の整理を行った。 省察や授業分析をハーマンスの対話的自己論を参考に捉え、教師が省察や授業分析を行う場面でそのようなポジションを取り、自己内対話を行っているかを明らかにした。ベテランの教師を対象として研究を行ったが、ベテランの教師は教師としての自分や授業者としての自分、特定の子どもになる自分といった様々なポジションによる授業分析をしていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、アクティブラーニングや対話的な学びを促す手法として着目され、多様な展開を見せている協同学習に関して、教師が省察を行うために協同学習場面を記録する方法の再検討を行うことができた。具体的には全天球カメラを活用することで、発言のみではなく、表情や仕草まで記録することが可能となった。また、授業アーカイブシステムのシステムを応用することで、全天球カメラで記録したデータを管理できることも明らかとなった。さらに、教師の授業省察に関しても、理論の整理を行うことができた。 これらの成果は学会発表や投稿論文としてまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後はさらに教師の省察に着目した研究を進める。具体的には、教師にウェアラブルカメラを着用してもらい、協同学習場面の視線を記録する。さらに、授業後に記録したデータを基に、どのように意思決定を行ったのかを明らかにしていく。初任者とベテランを比較することで、協同学習場面においてそれぞれが何を把握し、考えているかの違いを明確にする。協同学習場面をどれだけ捉えられているかを明確にすることで、省察時の情報提供の参考としていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に関して予算を遂行した結果34円の余りが出た。34円という少額の金額であるので、次年度へ持ち越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
物品で使用する。
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