研究課題/領域番号 |
16K17397
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研究機関 | 國學院大學 |
研究代表者 |
戸村 理 國學院大學, 教育開発推進機構, 助教 (00758576)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 戦前期私立大学経営 / 管理運営組織 / 経営と教学 / 教員人事 / 教育史 / 教育の歴史社会学 / 大学史 / 高等教育史 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、戦前期日本における私立高等教育機関の管理運営組織について考察を行うものである。具体的には戦前期において大学へと昇格した私立高等教育機関を分析対象にして、経営部門と教学部門とに分けた上で、第一に両部門の構造と機能の変容を歴史的に明らかにすること、第二に経営と教学の権限関係という視点からみた両部門の関係性を明らかにすること、第三に以上の分析と機関レベルでの財務及び教育実態との様子から、戦前期における我が国私立高等教育機関の多面的な経営構造の実態を明らかにすることである。 平成28年度は上記の課題について、少数の機関についてはその実態を明らかにし、その研究成果を査読論文として発表した。その研究成果から、戦前期の私立高等教育機関では、教学と経営とが分離している機関とそうでない機関とがあることが事例研究より明らかになった。また教員人事についても教授会にその権限を認めている機関とそうでない機関とがあることが明らかになった。今年度得られたこうした知見は、各機関の各種規定を詳細に検討した結果、明らかになったものである。この知見及び分析手法は、残りの研究期間で取組む他の機関の分析を行う上でも範になるものと考えられ、本研究の進捗を図る上で有益な成果であると思われる。また戦前期私立高等教育機関の中でみられた教育と財務の相克について、単著として成果を公開した。これは従来の大学史・高等教育史研究では十分に取り組まれてこなかった点を学術的に明らかにしたものである。来年度も本研究課題を進め、最終年度での成果公開に努めたいと考える。 なお本年度の資料収集等を通じて、国外にもいくつか興味深い資料があることが予想された。これについては、国内で出来得る限りの詳細な検討を行った上で、現地での調査を行うか否かを検討したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、平成28年度は、資料の収集・入力・整理の大部分を終えることを予定していた。ところが資料の調査・収集が予定より遅れてしまった。それにともなって入力や整理の作業も遅れてしまった。加えてこれらと並行して行う予定であった沿革史の通読も十分な状況ではない。とくに私立大学への昇格が後年になる機関ほど通読が進んでいない状況にあり、正確かつ迅速な通読に努める必要がある。平成29年度は分析を本格化することを予定しており、大きな課題であると認識している。
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今後の研究の推進方策 |
分析の方向性は明確であり、実現可能性も低くなく、見通しとしては問題ない。ただし「現在までの進捗状況」に記した通り、進捗が遅れていることは事実である。進捗の遅れの原因は、平成28年度においては年間を通じて、十分な研究時間を確保することができなかったことが一因である。そのためまずは本研究に割くエフォートを十分に確保することが求められる。資料収集及び沿革史講読については、まとまった時間が必要であることは言うまでもない。資料収集に関する旅程についても今一度見直しを行って、効率的な作業が行えるように努める。その上で次に平成28年度で得られた知見に準拠し、かつ研究成果の公開を見直した分析・執筆活動に努めたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が異なることになった要因は、旅費を十分に執行できなかったためである。これは本研究に対して十分なエフォートを割くことができなかったことによる。次年度は十分なエフォートを割くことが出来るよう努めたい。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度はすでに複数回の資料収集の旅程を予定しており、今年度分と合わせて当初の計画通りに執行できるものと考えている。
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