研究課題/領域番号 |
16K17399
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
孫 佳茹 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 助手 (40757316)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 童子軍 / ボーイスカウト / 少年団 / 中華民国 / 児童 / 社会教育 / 教育史 / 青少年 |
研究実績の概要 |
(1)平成28年度の研究目的は 中国で「童子軍」と呼ばれていたボーイスカウト運動が、イギリス・アメリカ・日本とどのような交流をもっていたのか。童子軍の形成過程と、中国国内に展開したプロセスと伝播の特性を明らかにすることである。 (2)研究方法は童子軍関連の一次資料(新聞・雑誌・機関誌)に基づく文献分析の手法を用いた。 (3)研究成果として以下のことが明らかになった。①北洋政府時期にボーイスカウト運動が最も盛んで、全国におけるボーイスカウトの推進にリード的な役割を果たした地域は上海租界である。イギリス人をはじめとする外国人ボーイスカウト関係者の存在が上海租界にある外国人・中国人ボーイスカウト活動の設立と展開には欠かせなかった。②1910年代に全国におけるボーイスカウト運動の展開にもう一つ有力な担い手があった。主要都市にあるYMCAによる中国人児童を対象としたボーイスカウト活動が大きな役割を果たした。③江蘇省では公学校を拠点に展開された童子軍活動は、全国的に影響力のある「全国教育会連合会」・「中華教育改新社」と関わりながら、学校教育系統の資源を利用しつつ、新教育の一環として、「童子軍教育」としての側面が現れつつある。④上海租界をはじめ、北洋政府時期に展開された童子軍の社会活動の多くは「公共衛生」・「運動会」・「国家の祝日の祝い」・「イベントの秩序維持」と関連しており、「公共性・近代性」を含む内容が多かった。 (4)研究意義:研究成果の①と②により、従来一国史の視点でしか描かれてこなかった童子軍史に、新たなグローバルヒストリーの視点によって捉え直す作業の可能性を見出した。研究成果の③と④により、中国の近代教育における童子軍教育の重要性を提示した。それは童子軍は新教育の代表として、近代的な教育メソッドとして中国なりの捉え方が背景にあったからだ。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は下記4つ主題研究・分析を予定を立て、ほぼ分析が終了しているため、全体として「おおむね順調に進展している」。 (1)「上海租界における外国人児童ボーイスカウトの設立と展開」 (2)「上海租界における中国人児童ボーイスカウトの設立と展開」 (3)「上海租界から江蘇省への伝播」 (4)「1920年代における2大国際イベントへの参加」
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度は一次資料の整理と分析を行いつつ、スカウティングが中国近代教育に与えた影響について解明予定である。 具体的に、以下の3つの課題の分析に取り組む予定である。 (1)「国民党童子軍として改組されたプロセス」 (2)「日中戦争時におけるボーイスカウト活動ーー国際性のあり方」 (3)「童子軍教育が中国の近代教育に与えた影響」
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は所属機関より研究に必要なパソコンとカメラなどの備品の提供があったため、予定していた該当分の支出が次年度使用額として生じたのである。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成29年度より所属機関より上記備品の提供がなくなるため、研究を順調に進めるに必要な図書・資料、研究機材、そして研究調査のための出張費に利用する予定である。
|