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2018 年度 実施状況報告書

保育者養成カリキュラムの開発と実践に関する日米間の比較教育史的研究

研究課題

研究課題/領域番号 16K17407
研究機関東京成徳短期大学

研究代表者

永井 優美  東京成徳短期大学, その他部局等, 准教授 (30733547)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワード保育者養成 / 幼児教育 / キリスト教保育 / アメリカ幼児教育史 / 受容史
研究実績の概要

本研究は「保育者養成カリキュラムの開発と実践に関する日米間の比較教育史的研究」と題して平成28年から平成31年の4年間にわたって実施されるものである。戦前期における日米の保育者養成について、特に、アメリカの保育者養成が日本において保育に関わる者にいかなる影響を与えたかについて検討すること で、日本の保育者養成の実態と特質を解明することを目的とするものである。
本年においては主に次の三点の内容を実施した。第一に、国内調査において、アメリカ保育界との関わりの中で、戦前日本において保育者養成に従事していったアメリカ人宣教師A .L. ハウ(A. L. Howe, 1852-1943)の活動実態やその意図を考察した。ハウは頌栄保姆伝習所における保姆養成を担いながら、キリスト教関係者による保育団体であるJapan Kindergarten Unionを創設し、戦前日本において全国的に保育の質の向上を目指して活動を行なっていった。それはJKUの本部である、当時のアメリカで最大規模の保育団体であるInternational Kindergarten Unionとの交流が背景にあったことを指摘した。第二に、19世紀末~20世紀初頭におけるアメリカの保育者養成に関する前年度のシカゴでの調査史料を整理し、特に前述したハウに関する史料の読解を進めた。第三に、日本の保育者養成の特質を把握するため、保育者養成における普遍的課題などを広い視点に立ち検討した。特に保育者の研究力育成に関する視点を得た。
以上のような研究を継続的に行うことで、アメリカとの関係の中で形成された日本の保育者養成の史的特質を明らかにし、今日の保育者養成改革に示唆を与えたいと考えている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

国内における歴史的史料に関する調査を実施することができたことで、アメリカとの関係性のもとで展開してきた戦前日本の保育・保育者養成に関する史料の収集を行うことができた。それによって、これまで検討してこなかった組織や人物の存在を把握することができたものの、当初予定していた研究計画には含めていなかった内容であるため、慎重に検討した結果、時間をかけることになった。また、前年のシカゴ調査時に収集した史料が膨大であったため、その整理に時間を要したが、おおむね史料の体系的な保存は完了し、内容分析を進めることができた。その史料が筆記体であったため、読解に時間がかかった。また、歴史的研究を通して今日的な保育者養成の課題を検討するためには、昨今の保育者養成の動向を把握しておくことが前提となるが、保育者養成改革の最中にあることから、実態把握に時間が割かれている。また、これまでに報告者が取り組んできた戦前日本のキリスト教系保姆養成機関における保姆養成の特質にかかわる研究成果を広く公表するための時間も必要であった。これについては本研究の土台となる部分であるため、必要な確認作業であったが、一定の時間を費やした。以上のことより、最終年度を前にして、研究の進捗状況はやや遅れ気味であるといえる。

今後の研究の推進方策

引き続き「保育者養成カリキュラムの開発と実践に関する日米間の比較教育史的研究」を進めるために必要な史料の発掘のための国内外における調査を行い、収集した史料に関しては随時分析を行っていく。 具体的には、アメリカの保育団体であるInternational Kindergarten Unionとかかわりのある保育団体を新たに発見し、その分析を進めたことで、戦前日本で保育者養成に関わったこれまで把握していなかった人物を検討の対象にする可能性を見出すことができた。そのことにより、予定にはなかったことであるが、A. L. ハウ以外にもInternational Kindergarten Unionにおいて活発に活動した在日宣教師と日本人指導者の活動を分析していきたい。さらに広島女学校保姆師範科(後のランバス女学院保育専修部)のM. M. クック(M. M. Cook, 1870-1957)に関する新しい史料を入手したため、特にハウとクックの両者が携わったJapan Kindergarten Unionの活動および、同団体と関連の深いアメリカの保育団体International Kindergarten Unionの活動・交流の実態をまとめていきたい。それにより、今日の日本においていかなる保育者養成改革が行われるべきか示唆を与えたい。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた理由は第一に、身体的理由により、海外調査を実施することが困難であったためである。 第二に、国内調査地が近隣であったため、宿泊費・交通費が抑えられた。次年度は、旅費としては国内外の調査に必要な経費に、物品費としては先行研究の収集や電子機器・文具の購入他に、その他としては翻訳業務等において研究費を有効に活用し、研究成果を広く公表していきたいと考える。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] 「主体的・対話的で深い学びの研究―幼稚園教諭養成課程における実践―」2019

    • 著者名/発表者名
      福山多江子、生野金三、大澤洋美、香田健治、永井優美
    • 雑誌名

      『東京成徳短期大学紀要』

      巻: 52 ページ: 35-49

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 「子どもの加減行為についての一考察」2019

    • 著者名/発表者名
      大澤洋美、安見克夫、福山多江子、永井優美
    • 雑誌名

      『東京成徳短期大学紀要』

      巻: 52 ページ: 13-22

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 「「子どものための哲学」によって子どもの思考力は育成されるのか―保育者養成校の授業における学生の子ども理解の深化―」2019

    • 著者名/発表者名
      永井優美
    • 雑誌名

      『国語教育研究』

      巻: 563 ページ: 56-57

  • [学会発表] 「19世紀末から20世紀初頭のアメリカにおける日本の保育実践に対する認識―A. L. ハウの影響を中心として―」2018

    • 著者名/発表者名
      永井優美
    • 学会等名
      日本保育学会
  • [学会発表] 「保育者養成における指導計画作成に関する一考察―アクティブ・ラーニングの形式の授業を通して―」2018

    • 著者名/発表者名
      福山多江子、永井優美
    • 学会等名
      日本保育学会
  • [学会発表] 「幼児期の遊び「加減」の行為が育てる身体知の研究(2)―体験的学び「加減」行為から習得する言語感覚」2018

    • 著者名/発表者名
      安見克夫、伊澤永修、大澤洋美、岡本弘子、永井優美、鍋島惠美、福山多江子、村石昭三
    • 学会等名
      日本保育学会
  • [学会発表] 「戦前日本キリスト教系保姆養成機関における保姆養成の特質―アメリカ人宣教師の保姆像に着目して―」2018

    • 著者名/発表者名
      永井優美
    • 学会等名
      幼児教育史学会

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公開日: 2019-12-27  

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