本研究は,多様化する教育環境における文化的言語的少数派生徒のアイデンティティの交渉を明らかにするものである。平成16年から関連調査を行っている米国に長期滞在する日本人(元)高校生と日系米国人生徒らに焦点を当て、学内における異なるグループを識別する際に使う「ラベル付け(labeling)」と「テリトリー化(territoriality)」を主な分析対象とし、アイデンティティの 位置取りにおける言語と空間の役割の明確化を行ってきた。平成31年(令和元年)度前半は、3年間で検討してきたアイデンティティと空間の関連についての批判的な研究アプローチの分析をまとめ、6月に異文化間教育学会(新潟大学)にて成果を発表した。一方、8月にはロサンゼルスにて、現地の高校における参与観察、関係者らへのインタビュー、卒業生らのその後について追加調査を実施した。令和元年度後半は、夏に調査したものの分析を含めて、学術論文の執筆・投稿をした(当該論文は査読中)。 データ収集および分析も順調に進み、結果を学会にて発表し、執筆も進めることができた。また、先行文献と分析結果のデータベース化も進められた。調査地のひとつについては、現地との調整により追加調査が進められなかったが、それ以外は目標を達成できた。特に、ケーススタディという研究からより理論的なものへ発展させることができた点で、関連研究分野への貢献ができたと考える。これからから、概ね順調な進展という評価となった。 今後も、引き続きロサンゼルスおよびグアムでの追加調査を実施していくことで、研究の発展について企画したいと考える。
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