研究課題/領域番号 |
16K17411
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
五十嵐 洋己 千葉大学, 国際教養学部, 助教 (90768300)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | グローバルエスノグラフィー / スーパーリッチフライト / 教育移住 / 富裕層 / 社会階層論 / 移住産業 |
研究実績の概要 |
本調査は、アメリカのハワイやマレーシアのジョホールバルに移住して欧米系の学校へ子どもを送る日本人富裕層家族 の教育戦略を質的に考察し、格差社会と呼ばれる中でグローバルな社会階層において教育達成と地位形成を行っている仮説を検証することを目的としている。本年度の研究成果は以下の2点にまとめられる。 第一に、ハワイとジョホールバルに移住した日本人家族とそれぞれ、7件と25件の計32件のインタビューを実施した。以上のインタビューから、ハワイとジョホールバルへの子どもと一緒に移住する動機はメディアが強調してきた「子どもの教育のため」以外にも複雑で多岐に渡り、家族の職業、社会経済的な背景に深く関連するものと理解することができた。そして、この「富裕層」内の経済資本の保持の差異は大きく、その違いが家族の学校選択と移住先の選択パターンに影響を与えていることも分かった。また、特にジョホールバルへ移住した日本人家族の多くは、数年滞在した後、多くの家族が日本への帰国または第三国へ移住していることも分かった。 第二に、富裕層の海外移住についての海外の研究レビューと、2月に行なったシンガポール国立大学での研究発表や研究者との交流を通し、人の移動、特に富裕層の海外移住を理解するには、「移住産業」の念密な調査が必要であることを認識するに至った。 マレーシアとハワイへの移住を促進する「移住産業」の役割を把握するため、東京都内で実施されている海外移住セミナーに5回参加し、どのように海外移住する動機や国際教育を子どもに与える意義がそのセミナーで紹介され、生成されているか調査を行なった。 以上の2点について、来年度の初めにインタビューデータのテープ起こしを行い、より詳細な分析を行う予定でいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の予定していたハワイ調査とマレーシア調査を2回ずつ行いインタビュー調査を行なった点において目標は十分に達成したといえる。しかしながらマレーシア調査の移住者を対象としたインタビュー調査は順調である一方、ハワイ調査においてはインタビュー対象者を探すことが難しかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はマレーシア調査のデータ収集が順調で、非常に多くの移住者からの聞き取りを行うことができた。そこから得た知見の一つが、「マレーシアへの日本人移住者の多くは数年で日本に戻ってきていること」であったため、本年度は、2回予定されていた海外フィールドワークを1回にし、国内においてマレーシアに移住した後日本へ帰国した家族を中心に聞き取りを行えたらと考えている。また、ハワイ調査では現地での知り合いを通じて現地滞在中に調査対象者を探すことの限界を感じたので、来年度はこちらもフィールドワークを1回にし、ハワイへの移住から一時帰国、また帰国した家族を探し、引き続きインタビュー対象者を探していきたいと考えている。 来年度は今年度の調査のデータのまとめを行い、6月と7月の国際学会で発表予定である。そして、本研究に関連する論文の執筆依頼を受けたのでそちらも年度内に書き上げたい。
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