研究実績の概要 |
今年度は、インドの新国家教育政策(2020年)の分析を行い、「高等教育の国際化」がインドの教育政策の主要な政策の一つに位置付けられていることを確認した。新国家教育政策では、インドの卓越大学(Institutes of Eminence)の海外キャンパス設置の推進、外国大学(世界大学ランキングで上位100位以内に位置づく大学)のインドでの活動展開を認める法的枠組みの策定、外国大学での取得単位の認定、国際水準のカリキュラム整備や留学生への支援強化等による「内なる国際化(internationalization at home)」に取り組む方針が示されていることを確認した(GoI, MHRD 2020)。 また政府系(国立・州立)および私立の高等教育機関(国際的な大学ランキングで上位の機関、留学生受入れ人数が多い機関、外国の高等教育機関との教育連携プログラム数が多い機関等)に関するケーススタディーを行い、各機関の国際化に向けた取組み状況を確認した。その結果、政府系大学では、財政的制約、言語の問題(共通言語=各州の公用語>英語)、附属カレッジの増加による大学側の管理運営負担の増加、学際的カリキュラムの不足等が相まって、国際化への対応が不十分であることがわかった。一方、調査対象とした私立大学は、高額の授業料によって「国際化」対応に必要な財源を確保し、外国大学の学位取得教員の雇用や外国大学との教育連携等によって、国際水準の教育の提供を図っていることが明らかとなった。さらに、インドの高等教育機関と連携する外国大学には、英語圏の先進国の大学も多くみられる一方、ヨーロッパの非英語圏の国々やアジア・アフリカ・中東地域の大学もみられ、インドが植民地時代の遺産である「英語」を活用して、「南北の受益者」として恩恵を受けつつも、非英語圏やグローバルサウス諸国のパートナーとなりつつあることを確認した。
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