3か年の研究計画の最終年度にあたる平成30年度には、これまでの研究成果を踏まえて、①対象州の校長直接選挙に関する文献資料の収集・分析、②初年度に実施した対象州の校長直接選挙に関する現地調査(聞き取り調査とアンケート調査)の分析を継続するとともに、③全体的な総括を行った。 ①の作業に関しては、これまでの作業を継続したほか、ブラジルの最新の社会動向を踏まえることにより校長直接選挙制度やそこで選ばれる校長の意味合いをより俯瞰的に捉えることができると考え、Latin American Studies Association (LASA)バルセロナ大会で、ブラジルに関する情報を収集するとともに、ブラジル研究者らと校長直接選挙に関する意見交流をした。②の作業については、関西教育行政学会例会で『ブラジルの校長直接選挙で選ばれる校長の特徴:パラナ州での校長の語りからの分析』を発表するとともに、そこでの議論を踏まえたものを「校長直接選挙への立候補理由:パラナ州の校長の語りからの分析」(『びわこ成蹊スポーツ大学 研究紀要』第16号、印刷中)として投稿した。 ③全体の総括については、これまでに得られた研究成果をもとに総合的な考察を行った。その結果、次のような知見が得られた。第1に、ブラジルでは校長が不人気の職業となっていることを前提として、校長直接選挙に立候補するのは、各学校の教員や保護者からの信頼を集める教員もしくは教育専門士で、第2に、学校運営に対する問題意識や、学校運営をより良くするためのビジョンやアイデアを持っている人物である。しかも第3に、いったん校長に就つくと、その後も教員や保護者からの支持を受け続け、校長自身も校長であり続けることを望む傾向にある。 本研究成果については、出版化に向けて作業を進めているところである。
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