本研究の目的は、グローバリゼーションを背景として国際移動を行う日系ブラジル人のトランスナショナルなネットワーク資源を検討することにある。日系ブラジル人が、ネットワーク資源を活用することでいかなる地位達成を遂げてきたのか、遂げようとするのかを明らかにする。 平成30年度は、昨年パラナ州でインタビューした対象者の家族のうち、サンパウロ州で生活するご家族6名にインタビューを実施した。また、サンパウロ人文科学研究所において、こうした研究の課題についてディスカッションを行った。 実施計画に沿い、ブラジルに移動した日本人移民を起点とした3世代に聞き取り(3家族)を行った。本研究で見いだせたことは、過去の移民は、都市部に移動することで「地位達成」「教育達成」を行ってきた。一方で現在の移民は、日本とブラジル間を移動することでリスクを減少させ、「地位達成」「教育達成」を果たすケースが見られた。そのうえで、そうした達成が過去の移民のように、移民の世代が重ねるほど、そして末弟であるほど高くなる傾向が見られた。またネットワークの広まりは世界的で、日本とブラジルだけでなく、アメリカやポルトガルといった広範な領域に及ぶことが見出された。 こうした知見を、9月には教育社会学会(70回大会)において「日系ブラジル人のデカセギはなぜ続くのか-世代間生活史の分析から-」と題して発表を行った。また、これまでの研究の一部を、『移民から教育と社会を考えるー子どもたちをとりまくグローバル時代の課題』において分担執筆という形で発表予定である。
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