研究課題/領域番号 |
16K17422
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
前馬 優策 大阪大学, 人間科学研究科, 講師 (00632738)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 就学前教育 / 発達差 / 学力格差 / 幼小連携 |
研究実績の概要 |
本研究は、学力格差問題を解決するにあたり、就学前段階の子どもの実態や家庭や教育機関の様子が、小学校入学後の学力獲得にどんな影響を与えているかを明らかにするものである。具体的には(1)就学前教育段階から小学校への移行期にどのような問題が生じているか、(2)学力獲得にあたっての「カベ」にぶつかった時、それを乗り越えるためにどのような資源が有効であるか、の2点について検討する。 このため初年度は、公立のA幼稚園をフィールドとして、年2回の津守式乳幼児精神発達診断検査(津守式)、および参与観察を実施した。津守式の結果によると、対象となった園児(31名)は、「運動」「探索」「言語」の領域で伸び悩む一方、「社会」「習慣」の領域では順調に発達が進んでいた。ただ、「探索」については発達月齢が実月齢を大きく下回り、過去数年と比較しても特に課題が大きく残る結果であった。教師自身は、「競技的な遊びが多く、ごっこ遊びが少なかったこと」を一因としてあげるが、「打たれ弱い」「挑戦していく意欲的な子が少ない」という園児の特徴は大きく変わることはなかった。 また、参与観察からは、幼稚園の生活リズムに対して、スムーズに乗れている園児とそうでない園児が固定化していることが明らかになるとともに、その「乗れていない状態」によって、活動に降るに参加できていない状況を見出した。ただし、これが即時的に深刻な問題を引き起こすわけではなく、全体としては一つの活動に統合されているように見えた。こうした環境で過ごした園児が、小学校入学後にどのように過ごすのかを明らかにするのが次年度の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査開始前より関わりのあるフィールドであったことと、本研究の目的が現場からの関心も高かったため、フィールドエントリーおよび調査の継続が容易であった。
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今後の研究の推進方策 |
4月より、A幼稚園の卒園生10名が通う小学校でフィールドワークを開始する。すでにフィールドエントリーは終えており、1年生のクラスを対象に参与観察を実施していく予定である。幼稚園の時代の状況と照らし合わせて、どのように学校に適応し、学力を獲得していくかを明らかにする。また、教師へのインタビューも随時実施し、児童の成長の様子について複層的に情報を集めていく。 学力の状況については、教師の見取りと合わせて、学校で独自に毎月実施している計算テストの結果を考慮していく。 なお、調査は3月まで続ける予定である。
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