本研究課題の助成期間は平成28年度から平成29年度までの2年間であり、この2年間を通して戦後日本の障害児教育に関わる教育運動の資料を入手し、また就学運動に関わってきた人々にインタビュー調査を進めてきた。とりわけ、申請者がこれまでの研究で入手済みの資料や論文等とあわせて、その資料が散在し入手が容易ではない日本の就学運動史のデータを充実させた。なかでも申請者が重点的に収集してきたのが、関東圏の就学運動史の資料である。具体的には、総合的学習やものづくりの実践で知られる八王子養護学校の教育実践の資料や、子供問題研究会の会報や自費出版の冊子、また日本ではじめての就学運動の全国組織といってよい障害児を普通学校へ・全国連絡会の会報等の資料を収集した。このうち障害児を普通学校へ・全国連絡会については、設立時から今日に至るまでの会報に目を通し、日本の障害児教育政策と就学運動の歴史に関するデータベース化を図ってきた。また、インタビュー調査では彼らが運動団体を設立するに至った経緯やそこでの個人的な関わり、またそれぞれの運動に特徴的な思想がいかにして生成されたのかについて話を伺った。さらに、戦後の障害児教育の歴史と照らし合わせる作業を通して、これらの運動に特徴的な障害観や差別観について検討を行った。この2年間を通して、収集したデータをもとに論文のかたちにまとめ、学術雑誌の論文投稿や学会発表等の成果報告に努めてきた。
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