当初計画では、主な対象を中学校とし、入学時から卒業までの3年間、同じ集団の子どもたちを追跡調査することで、学力だけでなく自尊感情や社会観といった意識が、学校生活を通してどのように変化するのか、また、それらが学校の取り組みとどのようにかかわっているのかを明らかにすることであった。しかしながら、研究期間中に妊娠・出産をしたため、同一集団の追跡調査が困難となり、また、研究期間についても延長することとなった。 そのため、同一集団の追跡に関しては、学力調査や生活実態調査から明らかにするとともに、教師への聞き取り等を通して子どもの実態と学校の取り組みの関連性について検討した。また、最終年度はとりわけ小学校に焦点をあて、小学校間の取り組みの差と、学力格差や子どもの意識の差について検討した。以下、明らかになったことを示す。 ①中学校生活を通した学力・生活実態の経年変化の把握:入学時からの3年間を通して、学力平均値が自治体平均値に近づき、低学力者が減少した。ただし、社会的マイノリティ生徒については、高学力層と低学力層に二分される様子が観察された。②学校改善に向けた学校の取り組み:これまで実施してきた取り組みを整理し、ポイントを示すことで、教職員間で統一した方針のもと徹底した指導が可能になった。他方で、校区の他の学校で取り組んでいる効果的な内容を新規で取り入れることには抵抗感が見られ、教員配置や学校規模、地域性の問題などを考慮しなければ、学校改革は進まないことが確認された。③生徒の変化と学校の取り組みの相互連関:両者には一定の関連が見いだされたが、他方で、中学校生活を通した変化が、出身小学校によって異なることも明らかになった。同じ取り組みへの反応が、生徒文化によって異なることの発見は、今後学校改善に関わる研究を進めていく上で、重要な論点になるだろう。
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