研究課題/領域番号 |
16K17436
|
研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
森尻 有貴 東京学芸大学, 教育学部, 講師 (90757478)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | イギリス / ナショナル・カリキュラム / 音楽の要素 |
研究実績の概要 |
本研究における先行研究調査として、イギリスの音楽教育における文献を広く概観し、現状把握に努めた。特に中等教育修了資格試験(GCSE)の学習のために用いられているテキスト等から、求められている音楽能力や知識に関して考察を行った。 また、日本の小学校、中学校、高等学校で音楽指導経験のある教員にインタビューを行った。内容は、主に音楽の要素における指導に関して、留意している点や指導上困難を感じる点、改善されるべき点などについて、広く意見を聴取した。現行の学習指導要領において、重点化された音楽の要素に関する指導は、指導内容の明確化や学習者の焦点化を促す利点がある。しかし同時に、様々な音楽要素を一様には扱えず、また、音楽の要素の内容にもそれぞれ理解する上での難易度があり、系統的な指導に関しては課題があることが伺えた。 次にイギリスにて、音楽教師へのインタビューを行った。対象者は、公立学校、私小学校、寄宿舎学校を含む、幅広い校種に勤務する音楽教師からのインタビューを行い、様々な状況下での現状の把握に努めた。また、複数の教師から、実際に指導に使用している教材や評価をする上での資料等の提供を受けた。インタビューの結果と提供のあった資料等から、イギリスの音楽教育の現場においては、表現と鑑賞の活動内容に一貫性があり、同様の音楽的コンセプトやテーマに沿って、それぞれの音楽活動を行っていることが今回の事例から分かった。 日本の音楽教師へのインタビュー、イギリスの音楽教師へのインタビューの内容を分析し、さらにイギリスの教育機関が発行している新たなナショナル・カリキュラムへの指針に関する資料を称号し、次年度のイギリスの学校訪問、大学訪問のインタビューと観察の視点を探った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イギリスのナショナル・カリキュラムやGCSE(音楽)に関する資料の分析はおおむね順調であるが、ナショナル・カリキュラムの改革後、間もないため、今後も多くの資料等が発刊される可能性がある。そのため、文献研究は常に続けていく必要がある。特にGCSEに関する学習ガイドや参考書等の内容は、中等教育現場で指導内容に大きく影響することが予想され、考察する上で重要な手がかりとなることから、できるだけ多くの資料収集に努めた。それらの内容は、音楽教師のインタビューの内容と照合し、総合的に考察を行った。 日本の音楽教師へのインタビュー、イギリスの音楽教師へのインタビューは順調であり、特にイギリスの音楽教師へのインタビューは関係者の多大なる協力を得て、指導資料の提供や次年度の学校訪問の承諾も得ることができた。インタビュー内容だけでなく、実際に学校で使用している楽曲や映像資料、カリキュラムの概要の提供を受けたことは、現状を把握、理解する上で一助となった。インタビューへの協力者はいずれも支援的で、次年度以降の協力を要請することが可能であり、今後も意見を求めていく予定である。 また、イギリスの研究者を招聘し、日本の小学校での授業実践を通して、日本の児童の音楽能力とイギリスの児童の音楽能力の差について、意見聴取を行い、指導内容の影響に関して考察を行ったことは非常に有意義であった。実際の児童の反応から、表出された音楽的な能力の差異に関しての知見を深めることに有効であった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、イギリスにおいて実際の小中学校での指導現場の視察を行い、授業見学を行う。また、その観察に基づいてインタビューを行い、教師側の意図や授業方法について考察を行う。同時に、教員養成を行っている大学の教員にもインタビューを行い、教員養成の課程でどのような指導を行っているのかを探り、日本の高等教育への応用の可能性を考察する。これまでの研究成果で示唆された事項も組み込み、Appraisingでの活動の音楽の要素の理解だけでなく、その学習がどのように他の内容の学習へ適用されているかも含めて研究していく予定である。イギリスの音楽教育での音楽の要素の理解が、他の音楽的学習の内容へ循環される手法に関しても、調査していきたい。 それらの成果をまとめ、日本の音楽教師へ事例紹介をすると共に、日本の音楽教育への適用可能性についてインタビュー、意見聴取を行う。主に、指導内容や方法論、評価方法に関して、現状への適用や応用が、どのような側面で可能となるのかを探る。その際に、日本における次期学習指導要領の内容も含めて、意見聴取を行い、今後の汎用可能性についても検討していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
インタビューへの研究協力者の数名が謝金を辞退したことと、イギリスの音楽教育関係の書籍等は、ナショナルカリキュラムの改革に関する資料や書籍が今後も発刊されることから、次年度以降への購入を見込んだため、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
イギリスのフィールドワークでの滞在費や交通費、学会への参加費、最新のイギリスの音楽教育に関する書籍や文献等の購入に使用する予定である。
|