「コンピテンシー」のような能力概念を中核に据え、それに基づくカリキュラム改革を展開する動きが、昨今世界的な潮流をなしている。そのような中で、理科をはじめ各教科におけるカリキュラム編成の在り方が、様々に模索されている現状にある。 本研究は、我が国におけるコンピテンシー概念を導入した理科カリキュラム編成を展望し、すでにその具現化を達成したドイツにおける科学カリキュラム編成の全体像を構造的に解明することを目的としている。具体的な下位目的としては、第一に、ドイツ各州において編成された種々の科学カリキュラムについて、教育目標の設定や教授内容の選択・配列に着目し、コンピテンシー育成の観点からその特質を体系的に明らかにすること、第二に、科学系教科のコンピテンシーモデルの開発動向を探り、それを踏まえてコンピテンシーモデルを開発する際に考慮しなければならない視点や条件を明らかにすること、第三に、開発された科学系教科のコンピテンシーモデルから科学カリキュラムを編成する際の具体的方途・プロセスを明らかにすること、である。 平成30年度は、前年度までに明らかにした各州で編成された科学カリキュラムの特質、及びカリキュラム編成の基盤と目される科学系教科のコンピテンシーモデルの実態、開発視点等を踏まえつつ、コンピテンシー指向の科学カリキュラム編成の原理について検討・考察した。 3年間の研究を通じて、カリキュラム編成上重要となる目的・目標面については、コンピテンシーモデルをベースにしながら生徒が獲得すべき科学のコンピテンシーを規定し、内容構成面については、中心的なテーマや内容を精選して示すような方向性が見出された。こうした点は、今後の我が国における理科カリキュラム編成をめぐる議論に示唆を与え得るものである。
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