平成30年度は、幼児教育における遊びや文字学習に関する文献、また児童期の文字教育に関する文献を収集し、主に子どもの文字学習力(文字の学習方略の獲得を含む)を育成するためにはどうすればよいのかという観点から文字教育論の検討を行った。主な研究内容は、以下の3点である。(1)児童の文字学習場面を参観し、学習者がどのように文字を読み書きしているのかを観察する。(2)幼児教育における環境の捉え方と、遊びに使用される素材および素材との関わり方についての先行研究を収集し、考察する。(3)漢字学習力(漢字学習方略)の観点からの漢字教育論について検討を行う。 まず、小学校国語科授業における文字学習場面において、学習者がどのように文字を読み書きしているのかを観察した。作文場面においては、表記ルールや文字の書き方に対する質問が発話の中心となっており、分からない文字については見せ合ったり教え合ったりする姿が見られた。また、平仮名一字を取り上げた授業場面では、文字の特徴(文字を書くときのコツ・注意点を含む)を自分なりの言い方で表現したり、自分や他者の書いた文字について評価したりする姿が見られた。あわせて、幼児教育における環境の捉え方および提供素材とその関わり方に関する先行研究の収集、考察を行った。先行研究から、素材の選定・分類のための観点や、幼児の興味関心による遊び方の違い、また自発的な文字使用における文字の機能の理解・使い方等に関する示唆を得た。これまで、平仮名学習を中心として考察を行ってきたが仮名文字学習、漢字学習という枠を超えた文字学習の系統性を考える上で、漢字教育論の検討が不可欠であることから、漢字教育の先行研究において漢字学習力育成のための指導内容がどのように考案されてきたのかという点について検討を行った。
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