研究課題/領域番号 |
16K17442
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
渡邉 美香 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (30549100)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 美術教育 / 映像メディア表現 / 時間-空間 / 造形理論 / L.モホリ=ナジ |
研究実績の概要 |
本研究は、様々なメディアが道具として私たちの表現の可能性を広げている現代において、美術教育における映像メディア表現指導方法の基礎を理論化することを目的とする。道具や機械が造形表現の有効なツールとなることについて、単なる機材の技術的指導に偏ることなく、藝術表現(アート)に共通する色彩や光の機能的価値の視点と感情面とを結びつける指導方法を構築する。 本年度は、バウハウスの指導者であったL.モホリ=ナジのシカゴデザイン研究所での教育研究活動に関する文献調査を行い、色彩と光による「空間ー時間」の解釈の問題としてとらえる彼の造形理論を基に、中学校美術科、小学校高学年の図画工作科授業におけるメディアを用いた造形教育内容を検討した。L.モホリ=ナジ著『Vision in Motion』及びG.ケペッシュ著『Language of Vision』等文献資料から、写真、動画における造形実験をまとめ、光、色彩、形、線、面、ヴォリューム、動き、テクスチャー、時間、音、視覚の軸等、材料操作の捉え方の分類と作品制作における感情の統合の方法について理論を整理した。視覚情報の豊かな現代において「創造性」を核とした造形表現指導の重要性、及び、感性を媒介としたコミュニケーション手段としての「視覚言語」概念を用いた映像に関する造形理論の提案を行い、これらの成果を美術科教育学会第39回静岡大会で発表した。 また映像メディア表現に関わる現在の動向や教育に関する資料を、カルフォルニア州アナハイムで開催されたシーグラフ43回大会に参加し収集した。そこで紹介された最新のインタラクティブアートの実践を大学附属の小学校図画工作科授業に取り入れ、子どもの興味や発想の深まりにかかわる映像メディア教材の検討を行った。また、附属中学校とインドの学校とのビデオ交流授業を実施し、メディアを活用した指導方法の構築に向けた試行を重ねた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、様々なメディアが道具として私たちの表現の可能性を広げている現代において、美術教育における映像メディア表現指導方法の基礎を理論化することを目的とする。2年間で映像メディア表現の指導方法についての提案を実現するために、本年度では、映像表現の造形理論及び理論化のための仮説について、文献資料を基にまとめることを計画した。平成28年度においては、視覚情報の豊かな現代における「創造性」を核とした造形表現指導の重要性を提案しつつ、写真、動画における造形実験より、光、色彩、形、線、面、ヴォリューム、動き、テクスチャー、時間、音、視覚の軸等、材料操作の捉え方の分類と作品制作における感情の統合の方法について理論を整理し、その成果を学会で発表することができた。ことからおおむね順調に進展していると判断した。感性を媒介としたコミュニケーション手段としての「視覚言語」概念を用いた映像に関する造形理論について今後論文等にまとめ、指導方法の検証へ着手していく土台ができた。 また、附属小・中学校でのメディアを用いた授業実践、大阪府下の中学校での美術科授業実践で現場教員と指導方法について検討した。事例がまだまだ少ないため、来年度も引き続き実践を続け、指導事例から理論を検証していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、文献調査で整理した理論及び、L.モホリ=ナジの制作を通したツールの分析方法を参照し、実際の映像制作の実験を行うことで、映像の理論の仮説を強固なものにしていく。制作を通して視覚的にものの見え方を変容させ感性に応じて意味ある形に作り上げる映像メディア表現の技法を段階的(複雑性のあるものから単純なものに切り離し統合する過程)に示し、特に視覚藝術における色彩と光による「空間―時間」の解釈の問題を軸に、映像メディアツールとしてのカメラ機能の活用等を分析、考察する。考察結果を基に、画面が静的な面から動的な空間へと変容するダイナミズムを作品として実感できる造形教育内容の検討を行う。 平成28年度に引き続き、教材開発においては、中学校においては実践を基に映像表現の指導内容指導方法を検討する。造形理論と指導方法についての検証・検討の成果を、Insea(美術教育国際学会)大邱大会で発表し、論文にまとめる。また、映像メディア表現における「空間―時間」の内容に関連し、空間を超えたりインタラクティブな手法を取り入れた題材として海外の学校との美術交流授業を計画、実施し、指導方法の検討を重ねる。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品調達方法の工夫などにより、当初計画より経費の節約ができたため、端数の残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は海外での学会発表及び、海外学校との交流等の大幅な出費が見込まれるため、少しでも多く交流のための旅費・謝金等の費用に充てる。
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