本研究は、様々なメディアが道具として表現の可能性を広げている現代において、美術教育における映像メディア表現指導方法の基礎を理論化することを目的とする。道具や機械が造形表現の有効なツールとなることについて、単なる機材の技術的指導に偏ることなく、藝術表現(アート)に共通する色彩や光の機能的価値の視点と感情面とを結びつける指導方法を構築する。 本年度は、昨年度までの文献資料調査及び中学校でのメディア表現授業実践の分析を行い、中学生の個性が表れるストップモーション・アニメーション題材についての指導方法を提案した。この成果を第35回Insea大邱大会(韓国)で発表した。また、上記中学校での実践及び大学生へのコンピュータ・アニメーション授業での成果や舞台での映像制作をもとに「映像メディア表現の指導」について天津大学王学仲研究所で研究発表を行った。その際、中国語翻訳でのパワーポイントを作成した。さらに、台湾屏東大学で開催された美術デザイン国際学会で、新たなメディアを用いた表現とその指導方法についての考察を発表した。 映像メディア表現の技法を段階的に示すための制作実験の成果として、3月に大阪海岸通りギャラリーで作品「KAMISUKI」を発表した。(平成30年度『美術科研究』掲載予定)画像が静的な面から動的な空間へと変容するダイナミズムを複数の和紙にプロジェクションする方法で実現した。造形教育内容としての映像メディア表現で検討すべき論点として、静止画に動きと奥行き(空間)を生み出す方法を整理した。 また、映像メディアに関わる現在の動向や教育に関する資料を、学会大会や山口芸術情報センターで収集した。映像メディアのインタラクティブ性を活用した授業として、インドの小学校と附属小学校、インドの中学校と附属中学校で文化交流美術授業を試行した。
|