我が国の教師文化の中には,優れた教育活動を実現するための行為として,教材研究というものが存在する.本研究では,「教材研究の方法」を研究対象とし,その記述・整理・伝達の方法を確立することを目指している. 特に,平成28年度はその基礎となる理論的な記述枠組みを構築し,それを実用したり,有識者に広く意見を求めたりするなどして改良していくことを行った.より具体的には,次のような場で研究の成果を発表し,そこで出された意見を参考に理論の工夫・改良を行っている.(1)数学教育学会2016年度秋季例会にて総合講演を行い,広く研究成果の公開を行った.一つ一つの授業単位で教材研究を捉える方法に加え,大きな単元という単位でこれを行うことの有用性について示唆を得た.(2)奈良市教育委員会主催「奈良市教職員研修 数学科教育研修講座(2)」で講師を務め,現職教員への研究成果発信と意見交換を行った.これにより実用性の高い理論を構築するための示唆を得た.(3)奈良教育大学で実施されている奈良セミナー(第122回,平成28年9月11日)において,研究成果をふまえ研究者・現職教員・大学院生・留学生などと教材研究について意見交換を行った.留学生と日米の教材研究についての意見交換なども行い,国際的な視野からも理論の見直しを行った.(4)日本数学教育心理研究学会(PME-J)2016年度秋季研究大会において研究発表を行った.より広く国際的に研究成果を発信していくことも見据え,理論の補強や今後の研究方針についての意見を頂いた. これらの取組を通して,教材研究の方法を捉え記述する基礎的な枠組みを構築し,その実用性や有用性,今後求められる研究の方向性等を示したことが主な研究成果である.
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