研究課題/領域番号 |
16K17444
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
橋崎 頼子 奈良教育大学, 教育学部, 准教授 (30636444)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | シティズンシップ教育 / カリキュラム / ケアリング / アイデンティティ / ナショナル・シティズンシップ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本の中学校において、ケアの倫理に基づくシティズンシップ教育のカリキュラムの開発と評価をノルウェーとの共同を通して実施することである。本年度は、下記のことに取り組んだ。 第一に、先行研究や関連文献の収集を通して、ケアの倫理とシティズンシップ教育との関連についての考察を行った。 第二に、中学校における二年目のシティズンシップ教育カリキュラムの開発を行った。自己と他者がつながる上で重要なことについて生徒たちに探究させるため、地域やグローバルな場面で、ケアのモデルとなる人、ケアの対象となる人たちに出会う場を作った。その出会いを通して、人と関わる上で大切なことは何かを考え、文化祭で発表する活動を行った。特に、「どのように家族になったか」など、アイデンティティの形成過程に注目する発問を行った。そこでの生徒の学びについては、ノルウェ-からの共同研究者を交えて、授業の参与観察や、生徒のワークシートの分析を通して考察した。研究成果については、国内の学会で発表予定である。 第三に、中学校における三年目のシティズンシップ教育カリキュラム開発の焦点を、ナショナルレベルでのシティズンシップ形成に定めた。その中心である「市民とは何か」と「国民とは何か」といった内容に関する教材開発のための素材集めのため、ノルウェーにおいて、難民や移民に関わる方々や学校でインタビューを実施した。その際、人々の関係にケアしケアされる関係がみられるのか、またそれをどのように育成しようとしているのかについても尋ねた。 第四に、日本とノルウェーの教員養成についても、カリキュラムを実施する上では不可欠だと考え、その前提として日本とノルウェーの教員養成段階の学生の意識調査も同時並行で行った。その成果を国内と国際学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画は、おおむね順調に進展している。 2年目のカリキュラム開発を実施し、3年目のカリキュラム開発のための素材をノルウェーを訪問する中で集めることができた。また2年目のカリキュラムの成果を、ノルウェ-からの共同研究者を交えて、授業の参与観察や生徒のワークシートの分析を通して考察した。 以上のことより、本研究の目的である、日本の中学校において、ケアの倫理に基づくシティズンシップ教育のカリキュラムの開発と評価をノルウェーとの共同を通して実施するという計画を、初年度の段階として概ね達成できていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は次の三点を中心に研究を実施する。
第一に、ケアの倫理と市民の社会への参加との理論的な関連性を明らかにした上で、実践との関連を説明するような内容で、国際学会の発表を行う。 第二に、中学校における三年目のカリキュラム開発と生徒の学びの聞き取りを進める。参与観察を定期的に行い、定期的に、生徒が書いたものを分析していく。 第三に、中学校の共同研究者と共にノルウェーを訪問し、三年目の「市民とは何か」と「国民とは何か」といった内容に関する教材開発のために、移民・難民・民族的なマイノリティの人々へのアイデンティティの葛藤などについてのインタビューを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ノルウェーへの出張を予定していた共同研究者が校務の関係で行けなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度にノルウェー出張を予定している。
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