2016年度は、研究の基盤である大学教育における学生のピア関係によって行われる学習に関する先行研究を整理するため、文献研究を中心に実施した。具体的には、大学創世記から中世に至るまでの大学教育において、学生の共同的な学習がどのように行われてきたのかについて、先行研究をもとにまとめた。また本研究では、学生同士の共同的な学習の中でも特に,学生のピア関係によって行われる学習に注目しているが、本研究における学生のピア関係とは,大学教育において学生同士の学び合いが成立することによって生じる関係性であり,それは一方が他方に「仲間」や「先輩」として支援的な役割を演じる場面で成立する関係性である。そのような学生のピア関係で行われる学習が大学教育において意図的に実践されるようになったのは、1880年代後半から1920年代までのアメリカのカレッジ・ユニバーシティにおける新入生オリエンテーションの取り組みが大きな転換点であり、この時代のオリエンテーションから始まり、その後のさまざまなカリキュラムや学生サービスを中心としたピア関係の学習を先行研究を調べていくことによって整理を実施した。また、本科研のテーマである元学生たちにインタビュー調査を行うため、元学生たちに連絡を取り、インタビューの同意を得た。2017年度は、実際にインタビュー調査を実施し、データの分析に取り掛かるよう準備を進めていく。
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