本研究では,学生のキャリア形成支援という観点から見て、サポート活動を行った学生がその後のキャリア形成において、自身の経験をどのように解釈しているのかについて注目した。最終年度にあたる2019年度は、6月と7月に本研究に関わる調査協力者2名のインタビュー調査を実施した。これにより、調査対象者6名全員にインタビュー調査を実施することができ、彼ら卒業生がどのようなキャリア形成を行っているのかについて考察を進めることができた。 今回の調査からは、彼らがピア・リーダーを経験したことで、そのカリキュラムの意図であった、「人間関係の中で、何を大切にしていくのか」について考え、「関係づくりに対する批判的な視点をもって、今後の人間関係づくりができる」ようになっているかどうかについて検討することが目的であった。卒業後5~7年程経過した彼らの語りからは、ピア・リーダーでの経験を意義づけており、職場での人間関係の中でその経験を生かしている様子が見られた。 この調査では、大学教育カリキュラムについての達成を長期的な視点から評価する取り組みであり、卒業生が学びを生かして人間関係を形成し、ピア・リーダーの経験とキャリアと結びつけて考えているのかの詳細を明らかにすることができた。職種の違いもあり、調査協力者の全員がピア・リーダー経験を今の職業に結び付いていると強く認識しているわけではない。しかし、インタビュー調査できたのは6名と少ないため、一般化はできない部分もあるが、キャリア教育において求められる「基礎的・汎用的能力」(中教審,2011)のうち、人間関係形成・社会形成能力や自己理解・自己管理能力に関する能力の形成に、ピア・リーダーに関わる大学教育カリキュラムが寄与している可能性は高い。
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