研究課題/領域番号 |
16K17447
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
武田 信吾 鳥取大学, 地域学部, 講師 (10600926)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | こども / 造形活動 / 相互作用 / 学び合い / 他者観察 / 視線分析 |
研究実績の概要 |
モノとの直接的な関わり合いを他者と並行的に、あるいは協同的に行う造形活動においては、他者観察の在り様は学びの質を方向付ける重要な要素であると考えられる。また、活動を共にする相手との発達段階的な差異が、他者観察の在り様に影響を与えていく事も予想される。本研究は、幼児~児童期のこどもがペアを組んで行う造形活動を対象として、視線分析を用いながら、2者間の他者観察の状況について明らかにする。 2018年度は、主として同年齢ペアで協同的に行うこどもの造形活動を扱った。第2~4学年の児童が行う造形活動を分析対象とし、児童48名が被験者として参加した(被験者のこども全員の保護者とのインフォームド・コンセントを踏まえた上で進めている)。アイトラッカー「Pro Glasses 2(Tobii社)」を着用したこども2人が1つの机に向き合う形で立ち、パターンブロックを主材料として2人で1つのものをつくる造形活動を5分間行うようにした(こども達には,ブロックで何をつくるかは自由であることを伝えた)。研究協力校である鳥取大学附属小学校の空き室を活動場所として使用し、通常授業日の休み時間内でデータを採取した。アイトラッカーで得たデータは、相手の手元(主に造形操作を行っている場所)と頭部、相手の制作物への注視行動の生起状況について、「行動コーディングシステム(DKH社)」を用いて数量化し、並行的に行う造形活動での状況と比較するなどして分析を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2016年度に実施した調査について、所属学会の学会誌に投稿し、武田信吾,2019,「異年齢ペアによるこどもの造形活動における他者観察」,『美術教育学研究』,第51号,pp.193-200として発表した(査読付)。また、他調査で得ていたデータを本研究での知見を踏まえて論文としてまとめ、所属先の紀要に投稿し、武田信吾,2018,「協同的な造形活動におけるこどもたちの目的についての検討―図画工作科の授業における相互作用の視線分析に基づいて―」,『地域学論集』,第15巻 第1号,pp.125-134として発表した。2017年度に実施した調査については、現在、2019年度中の発表を目指して論文としてまとめている段階である。2018年度に実施した調査については、現在、アイトラッカーで得たデータのコーディングを進めている段階である。左記についての分析結果についても、2019年度中に論文として発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度、7月9~13日にカナダで開催される国際美術教育学会の世界大会(2019 International Society for Education Through Art (InSEA)World Congress)において、これまでの一連の研究内容についてまとめたものを発表する予定としている(題目:Gaze behavior of Children during an Art Activity,査読付,アクセプト済)。こどもの成長・発達について理解する視座を拡充する知見を得る目的として、学会の場で他国の研究者との交流を通じて、造形活動における学習者同士の学び合いを方向付ける基盤を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請者は補助事業期間内に行ってきた研究活動で一定の成果を得てきたが、その学術的意味を的確に捉えるためには国際的視野に立って検討を行う必要性がある。そこで前述した通り、2019年7月にカナダで開催される国際美術教育学会の世界大会で研究発表を行うこととした。学会の場で他研究者との交流を通じて得た知見を反映させ、実績報告書の質の向上を図るため、補助事業期間の延長を申請し、一定額を繰り越した。
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