本研究の目的は、中学校技術・家庭科技術分野(以下技術科と略記)における教員養成のための技能教授に関する指導力を向上させるための教材および指導法を開発することである。 上記の目的に照らして本年度は技術科教員養成における体験をもとにした授業研究の方法論とその指導法について検討した。技術科教育に限らず、教員養成及び教師教育においてケース・メソッドとしての授業研究は、国内外問わず、専門職としての教師の力量を形成、向上させる上で重要な方法とされてきた。そうした重要な意義をもつ授業研究の方法としては一般に、授業を直接観察する方法や実践記録を用いる方法、映像記録を用いる方法などがある。しかし、技術教育の特性や日本における普通教育としての技術教育の現状を考えると、技術科教員養成における授業研究の方法としては上記の方法のみでは解決しづらい困難がある。 このような状況に対し本研究は、技術科の教員養成課程に所属する学生を対象とした授業研究の一つとして、研究の対象となる授業の内容を実際に疑似体験させつつ実践記録を読み解かせ、その授業の評価を行わせる方法を開発した。こうした方法をとることによって、生徒の意識の変容や、その授業に関する教師の意図に自らの思考を重ねつつ、検討が行うことができると考えた。 こうしたアプローチから授業を行った結果、学生らは体験の中で得た発見や実践記録への共感に関連づけながら実践を評価した上で改善点も考察することができていた。これらの結果や技術科教員養成の現在の課題と照らし合わせた上で、授業研究の方法の一つとしての疑似体験は、技術科の教員養成の中でも技能を教授する授業を研究するにあたって有効な手立てとなると考えられた。 また上記に加え本年度は、本研究の総括として中等教育での技術教育における技能教授の教育的意義について、とりわけ生徒らが形成する自信に着目しつつ検討を行った。
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