研究実績の概要 |
平成28年度は実施が容易で効果的な道徳教育プログラムを開発し,その効果を検証することを目的とした。具体的には,道徳授業において役割取得能力を促進し,学校適応を向上させることを目的とした実践プログラムを行い,効果を検証することを目的とした。 対象者は公立小学校3年生の児童であった。プログラムの開始に先立ち,事前調査として役割取得能力測定課題(本間・内山,2002b),学校適応の行動面の測定として,教師評定によるクラス内行動尺度(本間・内山,2002aおよびCairns, Leung, Gest, & Cairns, 1995),学校適応の感情面の測定として,大対・堀田・竹島・松見・Ladd(2006)より日本版が作成された,SLAQ(Ladd & Price, 1987)の下位尺度である学校肯定感 (9項目)を用いて測定を行った。事前調査終了後,道徳授業において週1回×4回,プログラムを行った。授業中のディスカッションの効果の検証として,プログラム毎に,児童にワークシートに記載されている「みんなと話し合って考えが変わりましたか」という質問項目に「変わった」「変わらなかった」のどちらかに丸をつけてもらい,その理由について記述してもらった。その他の効果検証ついては,実践プログラム実施前に行ったものと同様の調査を行った。話し合いの効果として,4課題いずれも平均すると半数以上の児童が話し合いにより自分自身の考えが「変わった」と回答していることが示された。また,約1/3の児童の役割取得能力の発達段階が,プログラム実施後は1段階上の発達段階に向上していることが示された。学校適応については,教師評定については肯定的な変化が示されが,児童評定については,変化は示されなかった。プログラムの実践期間が1ヶ月間であり,児童自身の主観的認知までは影響しなかった可能性があることが示唆された。
|