研究実績の概要 |
研究1では小学3年生を対象に道徳授業1コマ(45分間:週1回×4)を用いた役割取得能力の促進を目的とした授業実践を行った。介入群と対照群の役割取得能力の発達段階の変化について,χ2検定を行ったところ,規則場面,対人場面ともに介入群の方が発達段階が促進した児童が有意に多い傾向が示された(ps <.10)。介入群のクラス内行動については,授業不参加行動はプログラム前後で変化がなかったが,規則遵守行動は有意な上昇傾向が認められ (p <.10),向社会的行動は有意な上昇が認められた(t =15.91, p <.001)。対照群はいずれの変数にも変化は認められなかった。これらの結果から,開発した道徳教育プログラムの有効性,および,通常授業時間内(1コマ)でも,回数を重ねれば効果は見込めることが明らかとなった。道徳授業が教科化され,授業プログラムの検討が急務な中,意義深い知見を示したと言える。研究2,3ではグループ(対象児3名)および個別トレーニング(対象児1名)による再介入を行なった。最終年度に行った事例検討では,①クラス単位(2016年度),②グループによるトレーニング(2017年度夏),③個別トレーニング(2017年度冬)のうち②,③に焦点を当てた。再介入1つ目の②グループでのトレーニングでは対象児3名中2名に役割取得能力とクラス内行動の改善が示された。他方,クラス単位およびグループでの役割取得能力トレーニングで効果が認められない児童1名に対しては,トレーニング課題の難易度を下げ,怒りに関する感情解釈能力について,再介入2つ目の③個別トレーニングを行い,役割取得能力の発達段階の促進およびクラス内行動の改善を示した。クラス単位およびグループでのトレーニングで効果が認められない児童に対して,トレーニング課題の難易度を下げ,個別トレーニングを行なう必要性を明らかにした点に意義がある。
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