本研究では、自閉症スペクトラム障害児における社会的相互作用の発達的変化を自己/他者理解の程度から把握することを目的とした。平成30年度は、これまで実施してきた予備調査(平成28年度)と本調査(平成29年度)から得られたデータの解析を行うとともに、自閉症スペクトラム児を対象に参与観察を行い、社会的相互作用において自己/他者理解の程度が社会的相互作用に及ぼす影響について検討を行った。先行研究では、社会的相互作用場面において、自己理解および他者理解の困難に起因する問題があることが指摘されていたが、それらが日常生活においてどのように現れるのか言及されてこなかった。本研究では、自己/他者理解の程度によって社会的相互作用の様相が変わることを明らかにした(研究成果の一部を学術雑誌へ投稿した)。加えて、自己/他者理解の程度に着目すると、自閉症スペクトラム障害児には定型発達児には認められない段階が存在していた。知的障害児では自己/他者理解ともに低い、もしくはともに高いという2つの段階があるのに対し、自閉症スペクトラム障害児には2つの間に他者理解が高く自己理解が低いという段階があった。これらのことから、社会的相互作用における自己/他者理解の発達は、知的障害児では同時並行的であるが、自閉症スペクトラム障害児では他者理解が先行する可能性が示唆された。今後、社会的相互作用場面における自己/他者理解の発達段階に関わる諸要因の解明および段階的な支援方略の構築を行う必要がある。
|