研究課題
“社会的情報への注目”は、自閉スペクトラム症(ASD)児者では定型発達(TD)児者より弱く、幼少期にそれは将来の言語能力や社会性を予測するとされる。しかし、どの種類の社会的刺激への注目が将来の言語能力や社会性により大きな影響を与えているのかは明らかになっていない。本研究は、4つの社会的情報(①顔刺激、②人と幾何学模様、③指差し、④biological motion;BM)を提示して社会的情報への注目を測定できるGazefidnerを用いて、どの社会的情報への注目が言語能力や社会性の発達に大きく関係しているかを3年間の縦断的追跡研究を通して明らかにする目的とした。なお、言語能力や社会性はVineland適応行動尺度を用いて計測した。初回実施分の解析として、幼児期から青年期までの横断的研究での社会的情報への注目の発達的変化を明らかにした。①顔刺激の目領域の注視率は、ASD群では10歳過ぎから下降しており、10歳付近から目への注視率を下げる要因が働いていることが示唆された。年齢によってASDの視線の異常の理由が異なることが示唆された。縦断研究についてはASD群20名・TD群29名に協力いただいき、そのうちASD群13名・TD群29名について予定期間の継続参加を終了した。条件を統制した平均年齢4.8歳時点のASD群と平均年齢4.5歳時点のTD群の社会的情報への注視と、1.5年後の社会性や言語能力の関連をパス解析で明らかにした。その結果、ASD群では④BMの正立画の注視率は言語能力に正の影響を与え、③指差しの指でさされたものなどの注視率は社会性と言語能力に負の影響を与えていた。TD群では、②人と幾何学模様の人領域の注視率が社会性に正の影響を与えていることが認められた。これから、発達障害特性の強弱により、将来の能力を予測する社会的情報の質が異なることが示唆された。
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Molecular Autism
巻: 11 ページ: 24
https://doi.org/10.1186/s13229-020-00321-w