学習障害を対象とした研究はこれまで多く行われているが、近年、学校場面における学習困難を対象とした支援においては、「学習困難が疑われた段階でいかに早期に効果的な支援を行えるか」という点に焦点が当てられるようになってきている。その背景として、これまでの実践では、学習困難が重篤化してから支援が開始されることが多く,既に学習に対する苦手意識が固まっているなど、二次的な問題が状態を複雑化させてしまっていると指摘されていた。そこで、本研究では、児童に対する学習困難リスクを早期に評価し、支援につなげる包括的なシステムの開発ならびに、その効果を実際的に検証することとした。 2018年度は研究最終年度であり、石塚ら(2012)や石塚ら(2013)で用いた就学後早期の算数困難スクリーニング法、読み障害と対象とした小枝ら(2011)の研究手続きを多層指導モデルに適用した上での効果及び課題についての検討を継続した。また、参加者のアセスメント情報とそれに対応した支援の状況、学校場面における教師の指導法・支援行動、学校場面における行動や学力成績の変容等についてデータ収集を行い、早期支援プログラムの開発につなげた。加えて、発達相談センター等の協力を得た上で、学習障害ハイリスク児における詳細な調査データの収集、課題を一部修正した上で就学前児を対象とした早期支援プログラムを試験的に実施し、その効果について予備的な検討を行った。
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