研究課題/領域番号 |
16K17471
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研究機関 | 福山市立大学 |
研究代表者 |
吉井 涼 福山市立大学, 教育学部, 講師 (50733440)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 学業不振 / 知能検査 / アメリカ合衆国 / 戦後日本 / 促進学級 |
研究実績の概要 |
本研究は、19世紀末~1960年代の日本と米国を対象とし、学業不振児への教育実践とその思想、教育制度にどのように位置づけられていくのかを明らかにすることを目的としたものである。平成29年度の研究課題は、特に、日米における学業不振問題に対応した人物の実践・思想の解明であった。次の3つの作業を実施し、成果を得ている。
(1)1930年代~1940年代半ばのデラウェア州における学業不振問題の分化過程とその教育的対応について、J.E.W.ウォーリン(John Edward Wallace Wallin 1876-1969)の実践を中心に明らかにした平成28年度の研究成果を、日本特殊教育学会にてポスター発表を行った。そこでの議論を通じて、考察の妥当性の検証を行うとともに、インクルーシブ教育との連続性・不連続性に関する知見を得た。発表・議論で得た知見を生かし、国際学術誌への投稿を行い、現在、査読審査中である。 (2)19世紀末~20世紀初頭における学業不振児の実態とカテゴリー化の過程を総合的に考察するため、公立学校外の機関において、種々の検査を活用しつつ、教育・指導を試みることで、学業不振の複雑な原因を説明しようとした人物の実践とそれを支えた思想を検討した。その結果、学業不振の原因は単一の要因では説明されえなかったこと、複雑な状態像をもつ学業不振を区別する基準が曖昧なものであったことが示された。 (3)戦後日本の学業不振問題について、①第二次世界大戦後から1950年代まで、②1960年代から現代までの二期に分けて分析した。通常教育関係者・特殊教育関係者、そして文部省によって、学業不振児が当時どのように認識され、いかなる対応方法が求められていたのかを明らかにした。促進学級を中心とする学業不振児に対する制度的対応が進まなかった背景について考察を進め、学術誌等への投稿に向けた準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の第二年度である平成29年度は、特に米国に関する部分については、前年度の研究成果を学術集会において発表をすることができた。また同集会での発表後に加筆と修正を行い、国際学術誌へ投稿を行うことができた。発表・投稿の過程で新たに生まれた課題についても、平成30年8月の国際学会への発表エントリーを行うことができた。戦後日本の学業不振問題に関する成果についても、学術誌等への発表準備が整っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は国際学会での発表を予定している。同発表において、教育史研究者との研究討議を行い、そこで得られた知見を生かして、さらなる史資料の整理・分析を進め、国際学術誌への投稿を行う。さらに、日米比較の観点から、これまでに得られた研究成果について総合的な検討を行い、学業不振問題の本質と展開について、教育・社会・歴史・文化・経済等の観点から国際比較を行う。
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