研究課題/領域番号 |
16K17472
|
研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
平野 大輔 国際医療福祉大学, 成田保健医療学部, 講師 (90572397)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | レット症候群 / 常同運動 / 視線 / アイトラッカー / 動作解析 |
研究実績の概要 |
平成28年度においては、レット症候群児(者)における手の常同運動の特徴の実態を明らかにすることを目的とし、全国の特別支援学校1,016校の校長および医療型障害児入所施設130施設、独立行政法人国立病院機構重症心身障害児病棟73施設、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター病院のリハビリテーション部門責任者に対し、郵送による質問紙調査を行った。調査項目には対象とした学校・施設を利用するレット症候群児(者)の年齢、横地分類、目的的な手の動き、手の常同運動の種類、手の常同運動が増える時・減る時、手の常同運動を減らす取り組み、興味関心の対象などを含めた。216名(年齢3-53歳、横地分類A1-E6)のレット症候群児(者)の情報を得ることができた。目的的な手の動きは150名に見られ、手の常同運動は203名に見られた。163事例においては手の常同運動が増える因子があり、170事例においては減る因子があった。手の常同運動は主に快や不快によって増加し、傾眠や快、集中、食事によって減少した。手の常同運動を減らす取り組みを行っている事例は104事例、行っていない事例は104事例と同数であり、手の常同運動に対する介入は十分確立されているとは言い難く、手の常同運動の増減因子と合わせて、今後各事例の経時的変化を検討する必要がある。また、194事例においては何らかの興味の対象があり、この多くは、人、映像などの見るもの、音楽などの聞くものであり、療育者が児(者)と深く関わることによって、児(者)の興味の幅を広げることができ、目的的な手の動きのきっかけになることが示唆された。また、レット症候群者1名を対象にアイトラッカーを用い測定を行い、観察のみでは判断できなかった認知機能について評価することが可能になった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、レット症候群児(者)に焦点を当て、「随意的な視線の動き」が「不随意的な手の常同運動」を減らすのか?について解明する。手の常同運動は、同じ運動の繰り返しによって上肢の関節拘縮や皮膚損傷などの二次障害を引き起こすため、手の常同運動を減らす取り組みは急務であるが、その手段は確立されていない。本研究においては、レット症候群児(者)における、1手の常同運動の特徴の実態、2視機能の特徴、3手の常同運動の運動学的特徴、4視線の動きに伴う手の常同運動の変化を明らかにする。平成28年度においては、1手の常同運動の特徴の実態について、全国の特別支援学校1、016校の校長および医療型障害児入所施設130施設、独立行政法人国立病院機構重症心身障害児病棟73施設、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター病院のリハビリテーション部門責任者に対し、郵送による質問紙調査を行い、目的的な手の動き、手の常同運動の種類、手の常同運動が増える時・減る時、手の常同運動を減らす取り組み、興味関心の対象などを明らかにすることができ、年度内に国際学会での発表および英文学術雑誌への投稿の準備を整えることができた。また、2視機能の特徴についても、トビーPCEye Mini 一式(株式会社クレアクト)、X2-30アイトラッカー TobiiStudioプロフェッショナル(トビー・テクノロジー株式会社)を購入し、レット症候群者1名を対象に測定を行い、観察のみでは判断できなかった認知機能について評価することが可能になった。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究においては、平成28・29年度の2年間においてレット症候群児(者)における、1手の常同運動の特徴の実態、2視機能の特徴、3手の常同運動の運動学的特徴、4視線の動きに伴う手の常同運動の変化を明らかにする。平成28年度において、1手の常同運動の特徴の実態については質問紙調査による全国の実態調査を行い、英文学術雑誌への投稿に至り、成果を得た。また、2視機能の特徴について、1事例の測定を行った。平成29年度においては2視機能の特徴、3手の常同運動の運動学的特徴、4視線の動きに伴う手の常同運動の変化を明らかにする計画である。2視機能の特徴については、平成28年度に1事例の測定を行ったため、今後被検者を増やし、検討を深めたい。3手の常同運動の運動学的特徴については、レット症候群児(者)の安静時における手の常同運動の映像を記録し、記録された映像から二次元動作解析を行い、常同運動における上肢の各関節の動き、速度、加速度、基準点間の距離、角度などに基づいた手の常同運動の運動学的特徴とそのパターンを明らかにする。4視線の動きに伴う手の常同運動の変化については、これまでの成果を基に、レット症候群児(者)の一人一人の視機能や認知機能、興味関心などに基づいた課題や刺激を、視覚刺激・課題作製ソフトウェア等を用いて作製し、モニター画面に提示する。提示された課題や刺激に対する視線の動きと手の常同運動の運動学的変化の関連について明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の成果を英文学術雑誌へ投稿する予定であったが、その投稿準備が遅れたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については、平成28年度の成果を英文学術雑誌へ投稿する際の英文校閲費とする。
|