平成29年度においては、平成28年度の質問紙調査によって得られた216名(年齢3-53歳、横地分類A1-E6)のレット症候群児(者)のデータの更なる分析を進め、手の常同運動を減らす取り組みが行われていた事例(104事例)と行われていなかった事例(104事例)との比較から、平均年齢、横地分類、目的的な手の動き、手の常同運動の減少因子・増加因子、上肢装具の装用の観点においては著明な違いがないことが示された。このことから、手の常同運動に対する介入は確立されているとは言い難く、今後どのような事例にどのような介入を行っているかの集積および具体的な介入方法の開発が求められることが示された。児(者)の興味や認知機能、発達段階等に基づいた課題や刺激を作製し、モニター画面に提示することで、画面を比較的注視できる児(者)においては、アイトラッカーを用いることで提示された課題や刺激に対する視線の動きを評価でき、観察のみでは評価が困難であった興味や認知機能、発達段階等を評価できる可能性が示された。画面を注視することが少ない児(者)においては、キャリブレーションの困難さや画面への注視時間の短さからアイトラッカーによる視線の評価は不向きであり、今後測定の工夫等が求められることが示された。画面の注視の有無に関わらず、映像からの動作解析を用いることで、身体や上肢の運動の変化を評価でき、手の常同運動の増減等を評価できる可能性が示された。課題や刺激によって、視線の動きや目的的な手の動きが促される時に、手の常同運動が減る児(者)も確認できたが、常同運動の増減因子は様々であり、今後被検者数を増やし検討を進めたい。
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