研究実績の概要 |
学習障害(LD)の中核と考えられている発達性読み書き障害のある児童(以下、発達性読み書き障害児)は、日本での出現頻度が約8%と報告(Uno et al.,2009)され、発達障害の中では最も多い障害群である。発達性読み書き障害の読み(音読)においては、正確性と流暢性に問題が生じる。文字の認識に視覚的な処理が大きく関与していることは言うまでもなく、発達性読み書き障害児の音読の正確性や流暢性に視覚的要因が与える影響に関しては様々な研究が行われてきた。その中で、未だ十分な検討が行われていないのが発達性読み書き障害児の音読と眼球運動機能との関係である。発達性読み書き障害児において、眼球運動機能は音読の正確性(正答数)には影響を与えないことが示されている(後藤ら, 2010)。しかし、文字列から音韻列への変換が規則的なひらがなやカタカナにおいて、主たる問題となる可能性が高い音読の流暢性(音読速度)との関連については、現在まで世界的にも検討が行われていない。本研究では、日本語話者の発達性読み書き障害児群を対象に、1)眼球運動機能と音読の流暢性の関係を検討するとともに、2)眼球運動トレーニングの効果が音読の流暢性に与える影響を明らかにすることを目的とする。 2019年度、COVID-19の影響を受け、発達性読み書き障害児、典型発達児ともに十分なデータ収集を行うことができなかった。2群間の違いについて、統計解析を用いた詳細な分析は困難である可能性があるが、少数のデータから眼球運動機能と音読の流暢性の関係について整理・考察し、研究成果報告書で報告する。
|