近年わが国において障害者権利条約が批准され、差別解消法が発効した。これに伴い、高等教育機関に在籍する聴覚障害学生にあっても、その修学に際し合理的配慮が法的に要請されることとなった。しかし、このことは彼らに対する支援を行う者の加配をもたらし、要約筆記や手話通訳等、人的資源に依存する聴覚障害学生支援では、そのすそ野において支援の質の低下も懸念される。そこで本研究では、教育を短期間で効率的・効果的に行うことを志向する教授設計学(Instructional Design)の知見を援用して、支援の初学者を育成するための教材を、PCや携帯端末等から視聴可能な教材として開発する。このことにより、聴覚障害学生支援を志す者が事前学習によって前提知識の一部を獲得することで、対面研修を担当する者の負担を減じること、従来の座学の内容が、より有意義なものになると考えた。 今年度においては、オーサリングツールを用いて、当初の予定通り研修ソフトウェアの初版を開発完了し、LMSと組み合わせることで実際に支援経験者・未経験者に使ってもらい、その挙動についてログを取得することができたほか、教材の改善について、具体的に意見をもらうことができた。総合的には、時間が足りず縮小・変更せざるを得なかった箇所もあったものの、予定された研究計画を完了することができた。今後は大学等において実際に活用されることを想定し、そのユーザビリティ等さらなる改善を加えていきたい。
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