研究課題/領域番号 |
16K17478
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研究機関 | 独立行政法人大学入試センター |
研究代表者 |
立脇 洋介 独立行政法人大学入試センター, 研究開発部, 助教 (50511648)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 発達障害 / 大学入試 / 受験上の配慮 |
研究実績の概要 |
これからの入試では、単純な知識だけでは解答できない問題や、筆記試験に加えて高校の調査書や面接なども用いた多面的な評価が必要とされる。しかし、このような新しい試験に対して障害学生が受ける配慮は十分に検討されていない。そこで本研究では、発達障害の学生がこれらの試験の際、どのような支援を必要とするかを検討する。 28年度は、①入試における配慮の現状と課題の整理、②図表等を中心としたマーク式試験における発達障害学生の困難さ、③英語多技能評価における発達障害学生の困難さの3点を検討した。 ①入試における配慮の現状と課題の整理:障害者差別解消法の施行によって、個別大学の入試における配慮が進んでいた。しかし、センター試験が基準となっているため、学力試験以外の入試に対する配慮が不十分であった。 ②図表等を中心としたマーク式試験における発達障害学生の困難さ:文字よりも抽象的な図表の読み取りが課題の中心となっている多肢選択問題を用いて実験を行ったところ、課題の成績と自閉性障害傾向との間に関連は見られなかった。 ③英語多技能評価における発達障害学生の困難さ:英語の「読み」「書き」の試験に加えて、自己報告式のcan-doリストによって英語の各技能について評価を求め、自閉性障害傾向との関連と検討した。その結果、自閉性障害傾向の人は、「読み」「書き」試験の結果において違いが見られなかったものの、自己報告式のcan-doリストでは全ての技能において、評価が低く、苦手意識を持っていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、「A.多肢選択型筆記試験」「B.記述型筆記試験」「C.面接試験」「D.障害者支援についての大学教員の意識」という4つのパートに分けて研究を計画していた。 28年度の研究実績のうち、①入試における配慮の現状と課題の整理は当初計画していなかったが、28年度に障害者差別解消法が施行されたことで、C及びDに関する状況が大きく変わったために追加した。研究実績②図表等を中心としたマーク式試験における発達障害学生の困難さによって、Aの一部を実施した。③英語多技能評価における発達障害学生の困難さによって、BとCの一部を行った。 以上より、当初の計画を一部変更したものの、各パートについて、必要な文献研究や実験を行っているため、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画を一部変更したため、「B.記述型筆記試験」について当初の計画にあった実験を優先して行う。この際、28年度の実績を踏まえて、文字や図表などの提示方法よりも、解答方法や解答の明確さなどに注目し、複数のタイプの問題を用いて検討を行うこととする。 「D.障害者支援についての大学教員の意識」については、28年度の入試を境に大学の取り組みが変わっているため、28年度前後の比較に関する内容も追加する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画と以下の2点を変更したため、経費の一部を翌年に繰り越すこととした。 ①新しい問題を作成した上で「B.記述型筆記試験」の実験を行う予定であったが、既存の問題を用いた実験に変更した。 ②障害者差別解消法の施行による影響などを整理したため、障害者支援についての大学教員の意識に関する調査を29年度に実施することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
前年繰り越した上記の①と②は29年度に実施し、問題作成と採点に関する費用、聞き取り調査やその後の分析の費用として使用する予定である。また、上記の分析のため、記録機器やパソコンソフトも購入する予定である。
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