これからの入試では、単純な知識だけでは解答できない問題や、筆記試験に加えて高校の調査書や面接なども用いた多面的な評価が必要とされる。しかし、このような新しい試験に対して障害学生が受ける配慮は十分に検討されていない。そこで本研究では、発達障害のうち、ASD傾向の学生がこれらの試験の際、どのような支援を必要とするかを検討する。 30年度は、高校生1、2年生を対象にしたweb調査を行い、ASD傾向と多面的な入試で用いられる、様々な評価内容に対する自信の程度との関連を検討した。その結果、以下の2点が明らかになった。第1に、ASDの傾向があるほど、志望理由や面接での評価に自信を持っていないことが明らかになった。受験生にとって、教科の試験と異なり、志望理由や面接は、評価基準があいまいであり、試験実施者の意図を推測することが求められる。しかし、ASDの人は意図の理解が困難であるため、これらの試験を苦手にしていると考えられる。第2に、「教科の試験」に対する自信とASD傾向との間には、関連が見られなかった。この結果は教科の試験の得点とASD傾向との間に関連が見られないという前年の結果と一致していた。 これらの結果を踏まえると、ASDの人は、これまで配慮が行われてきた筆記型の学力試験より、面接などの学力以外の能力に関する試験でより大きな困難さを示すと考えられる。しかし、評価基準があいまいなこれらの試験においてどのような配慮を実施するか、十分な検討が必要である。
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