研究課題/領域番号 |
16K17480
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
新堀 佳紀 東京理科大学, 総合化学研究科, 研究員 (20734924)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 合金クラスター / 精密分離 / 高速液体クロマトグラフィー |
研究実績の概要 |
次世代の機能性ナノ材料への応用が期待されているチオラート保護金クラスターは、銀や銅などといった異金属原子をドープすることができる。これによって、クラスターの発光波長やHOMO-LUMOギャップなどの電子構造を大きく変化させることが可能である。このため、異原子ドープはクラスターを高機能化させるための手段として非常に有用である。このような合金化されたクラスターは、溶液中での化学反応によって調製することができる。 しかし、一部の例を除き、ほとんどの合金クラスターは調製時にドープされた異原子数に分布を有する混合物が生成されてしまう。したがって、各組成を有する合金クラスターの真の物性を評価するためには、得られた混合物を組成毎に高分解能分離する技術の確立が必要不可欠である。申請者はこのような高分解能分離を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて取り組んでいる。 H28年度では幾つかの方法を用いて合金クラスター混合物を調製した。また、移動相や固定相を最適化することでHPLCの分解能を向上させ、合金クラスター混合物をその組成毎に高分解能分離することに取り組んだ。様々なHPLCのパラメーターを最適化した結果、各組成の合金クラスターを高分解能分離することに成功した。今後は、申請時の計画通り、本分離方法の汎用性の検討と、得られた各合金クラスターの個々の性質を解明していく。また、今年度の研究を行ていく中、合金クラスターの合成方法に依存して生成される合金クラスターの性質が異なることを示唆する結果も得られている。これは合金クラスターにおける異性体の存在を示唆しており、本分離法はそのようなさらに高度な分離をも実現できる可能性を示唆している
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二種類の金属イオンの同時還元法や、金クラスターに別の金属種を加えて一部の金原子を別の原子で置き換える金属交換法を用いて、様々な合金クラスターの混合物を調製することに成功した。得られた混合物を組成毎に高分解能分離するにあたり、HPLCにおける様々なカラムの形状、移動相溶媒などの種類を検討した。その結果、Au25-xAgx(SR)18合金クラスターの混合物をAg原子数毎に精密分離することに成功した。また、そのほかの組成を有するAu38-xAgx(SR)24などの合金クラスターに関しても高分解能分離の兆しが見えてきている。さらに、同じAg原子数でもドープされたサイトの異なる異性体毎へも分離されていることを示唆する結果が得られている。これらのことから、現在までの進捗状況を「おおむね順調に進展している。」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は得られた高分解能分離法の汎用性を検討する。具体的には、よりサイズの大きなAu38-xAgx(SR)24等のクラスターや、PdやPt、Cdなどの他の金属原子がドープされたクラスターに対し、さらに条件を最適化し、様々な合金クラスターの高分解能分離を目指す。また、各組成の合金クラスターの電子構造を紫外可視吸収分光法を用いて観測し、Ag1原子あたりのドープがクラスターの電子構造にどのような影響を与えるかについて明らかにしていく。さらに、H28年度の研究を行っていく中、合金クラスターは調製方法によって生成される合金クラスターの構造が変化することを示唆する結果も得られている。今後はこのような合金クラスターにおける異性体発生のメカニズムの解明も行っていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は数百円程度で購入するものが無かった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は次年度で必要となる数百円程度の試薬などの購入に使用する。
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