研究課題
チオラートに保護された金クラスターは、銀や銅などの異金属原子をドープすることにより、クラスターの発光波長やHOMO-LUMOギャップといった電子構造を変化させることができる。そのため異原子ドープはクラスターを高機能化させる有力な手段の一つである。しかし、このような異原子がドープされた合金クラスターは、合成の際にドープされた異原子数に分布が発生してしまう。そのため、それぞれの組成を有する合金クラスターの真の物性を評価することは困難である。合金クラスターの個々の性質を明らかにするためには、このようなドープ数に分布を有する混合物を組成毎に高分解能に分離する手法の確立が必要である。本研究では、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を駆使し、金と銀からなる金銀合金クラスターを組成毎に分離することに取り組んだ。その結果、HPLCにおける溶媒・カラム、さらにクラスター表面の配位子を最適化することにより、合金クラスターを原子レベルの精度にて組成毎に高分解能分離することに成功した。本研究で得られた手法は、金-パラジウム系、金-白金系の合金クラスターに対しても適応可能であり、サイズの異なる金銀合金クラスターの組成分離に対しても有効な手段であることが分かった。さらに、同一組成でもドープされた銀原子の位置が異なる異性体を観測することにも成功した。合金クラスターは合成条件に依存して、生成される異性体分布が変化することを示唆する結果も得られた。
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