研究課題
単一分子に代表される量子ドットの特徴的なエネルギー(帯電エネルギー、量子準位間隔、機械的振動モード(vibron)、近藤効果)はTHz周波数帯に存在する。そのため、THz光子と強く相互作用することが予想され、テラヘルツ電磁波が系のキャリア伝導に大きく影響する。本研究では、分子スケール領域へのテラヘルツ電磁波集光技術を用いることで、単一分子・量子ドット接合系におけるキャリア伝導のテラヘルツダイナミクスの解明を目指す。特に、分子振動-テラヘルツ光子間相互作用に起因した電気伝導特性の変調効果、量子ナノ構造のテラヘルツ応答特性について検討を行う。将来的には、単一分子・量子ドットでのキャリア伝導・量子多体効果のダイナミクスの解明、分子振動のコヒーレント振動に向けた基礎的学理の確立を目的として研究を遂行している。平成29年度は、「THz分光測定に適合した単一カーボンナノチューブ(CNT)トランジスタの素子作製工程の最適化とそのテラヘルツ光応答の評価」を中心として研究を進めた。従来の溶液分散法では孤立したCNTを得るためには、界面活性剤が必要でありCNTの特性劣化を引き起こす。それを避けるために、CVD成長法を用いたCNTの基板上への直接成長法の導入を検討した。特に、THz光を素子裏面から照射することを考慮した素子構造及び材料系の最適化について実験を行った。その結果、THz光の透過性を有し、CVD成長法に伴う高温プロセスにも耐え得るCNTトランジスタの作製に成功した。また、作製した単一CNTトランジスタのTHz分光測定を行った結果、CNT内の量子準位間の光学遷移に起因する明瞭なTHzスペクトルの観測に成功した。
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Nano Letters
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