研究課題/領域番号 |
16K17482
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小野田 穣 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特別研究員 (30647061)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シリセン / ゲルマネン / SiGe / 原子間力顕微鏡 / 元素識別 |
研究実績の概要 |
本研究では、原子間力顕微鏡(AFM)を用いた相互作用力測定によってSiとGe原子を元素識別し、二次元ハニカム格子状の単原子層SiGeシート(単層SiGe)の作製法を見出すことを目的としている。単層SiGeの作製のため、その母材であるシリセンの準備を行った。また、Ge以外の元素をシリセンに混ぜられる可能性も考慮して、元素識別法の拡張も行った。 シリセンはAg表面上で様々な相をとることが知られている。本年度は、まずシリセンの試料準備と、AFM研究に適した相の検討を行った。清浄化したAg(111)基板を230℃に保持した状態でシリコンを蒸着し、表面に形成したシリセンを走査トンネル顕微鏡により観察した。その結果、先行研究で最も多く報告されている4×4相やT相を確認することができた。4×4相は低速電子回折により構造決定されているが、T相は構造や周期性に関して議論がまだ続いているため、4x4相をAFMにより重点的に調査することにした。 AFMにより4x4相の原子分解能観察を試みたが、Si(111)-(7×7)などの基準試料と比べると、シリセン上のAFM像のSN比は悪く、安定したスキャンは困難であることが分かった。これはシリセン表面の凹凸が非常に小さいためだと考えられるので、SN比を向上させるための対策が今後必要である。 本研究では単層SiGeを目標として掲げているが、シリセンにはGe以外の元素も添加できる可能性がある。しかし、従来のAFMによる元素識別法はSiと電気陰性度が同程度であるIV族元素に限られていた。そこで本年度は、様々な電気陰性度を持つ元素に対しても適用可能な元素識別法の開発も行った。これを利用することにより、AlやO, Nなどがドープされたシリセンの探索も可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では本年度は単層SiGeの作製条件を突き止めることが目標であった。シリセン作製とAFM研究に適した系の検討は行えたが、母材のシリセンのAFM観察と相互作用力測定は予定通りに進まなかった。その結果、Geの蒸着実験も次年度への持越しとなった。
その一方、Si(111)-(7×7)を基準試料として元素識別法のブラッシュアップを行った結果、従来法では取り扱えなかったAl, O, Nなども識別可能な手法を新たに見出した。これによりAlやO, Nなどの元素がドープされたシリセンの探索も可能となったため、研究の幅を拡げることができた。
上記のように本年度中に二次元ハニカム格子状の単原子層試料においては元素識別まで達成できなかったが、元素識別法の適用可能な元素の種類を拡張することに成功したため「おおむね順調に進展している」という評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
単層SiGeの母材としてシリセンを用いているが、原子分解能AFM観察と各原子サイト毎の相互作用力測定は想定より困難であることが分かった。この原因としては、Si(111)-(7×7)表面に比べて、4×4相のシリセン表面におけるSi原子同士の間隔が垂直・水平方向に非常に小さいことが挙げられる。現在は室温AFMにより測定を行っているが、今後は低温環境でのAFMや、より感度の高いAFMセンサーの使用などによりSN比を上げて研究を進める予定である。
また、本研究では単層SiGeの作製のため、シリセンを母材としてGeを段階的に加えていく予定であった。しかし、シリセンにはGe以外の元素も添加できる可能性があることが理論側から報告されている。本年度開発した新たな元素識別法はSiと電気陰性度が異なる元素に対しても適用可能なので、今後はGe以外にもAlやO、Nなどがドープされたシリセンに対しても実験を行っていく。
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